天津煎餅

天津煎餅（てんしんせんべい）

天津煎餅は、中国の華北地区に位置する天津市を代表する軽食です。主に水で溶いた緑豆や小麦粉をベースに作られ、丸い鉄板で焼き上げて仕上げるそのスタイルは、まるで一銭洋食に似ています。この食品は、実際のところ日本で知られている米を使った煎餅とは異なりますが、地元の人々に長年親しまれています。

特徴と調理法

天津では、この料理は単に「煎餅」（チエンビン）または「嘎巴」（ガーバ）と呼ばれ、ストリートフードとして手軽に楽しむことができます。多くの場合、カート式の屋台が七輪やガスコンロを使って調理し、焼きたてをその場で提供します。このスタイルは、観光客にとっても魅力的で、熱々の煎餅をその場で味わえる機会は貴重です。

もともと山東省の山東煎餅から派生したとされる天津煎餅は、原料が改良されてきました。初めは粟の粉をベースにしていたものが、現在では主に緑豆の粉が用いられるようになりました。緑豆が使用される理由は、その旨味が感じられるからです。粉を使用しない場合もあり、生の緑豆を水に浸して柔らかくした後、皮を取り除いてすりつぶす方法もあります。

このように、各地で販売されている天津煎餅は、必ずしも本場のスタイルを保っているわけではありません。地域によっては、コストが低い小麦粉を混ぜたり、完全に小麦粉に置き換えたりすることも多く、これが風味の違いとなることもしばしばです。元来の味付けは麦味噌と刻んだネギのシンプルさですが、現在では唐辛子味噌、腐乳、煎りゴマやクミンといったスパイシーなトッピングが人気を集めるようになっています。

変種の紹介

煎餅餜子

煎餅餜子は、天津煎餅の派生品であり、緑豆の煎餅で揚げパン（油条）を包み込んだ特別な料理です。一般的に「天津煎餅」として販売されるものの中には、実際にはこの煎餅餜子であることが多く、見た目は煎餅に似ていますが、風味や食感は異なります。北京では1980年代から人気があり、薄く揚げたクラッカー「薄脆」と呼ばれるものを挟んだスタイルも一般的です。

嘎巴菜

嘎巴菜は、緑豆の煎餅を細切りにして、トロトロの餡をかけた料理です。特に天津の朝食として広く親しまれており、地元の人々には無くてはならない料理となっています。しかし、この食品は天津以外ではほとんど見かけません。

最後に

天津煎餅は、その独特の風味と多種多様なアレンジのおかげで、若者から年配者まで幅広い世代に愛されています。街の屋台で立ち寄った際には、ぜひこの美味しい軽食を試してみてください。どこか懐かしさを感じさせるその一品は、中国のストリートフード文化を象徴する存在です。

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