天竜三郎

天竜三郎の生涯と功績

天竜三郎（てんりゅう さぶろう）は、1903年11月1日に静岡県浜名郡三方原村で生まれました。本名は和久田三郎（わくた さぶろう）で、出羽海部屋に所属する力士として知られています。天竜の生涯は、力士としての成功にとどまらず、春秋園事件の主導者としても重要な位置を占めており、その影響は今もなお大相撲界で語り継がれています。

早期の経歴と角界入りのきっかけ

彼は農家の三男として育ち、学問に励む姿勢がありました。尋常高等小学校を卒業した際には、既に身長176cmに達し、「静岡に怪童あり」と評判になっていました。出羽ノ海（元横綱常陸山）からの誘いを受けたものの、最初は学業を優先して断った天竜。しかし、出羽ノ海の再度にわたる勧誘の影響を受け、最終的には角界入りを決意することになります。父親からは、「入幕するまでこの駅に降りてはならん」と言われながらも、1920年1月に初土俵を踏みました。

力士としての成長と活躍

天竜は初め、運動能力が低く、稽古に苦しみましたが、身体の柔らかさと長身を生かして取り口を変化させ、突っ張りや右四つからの寄り、上手投げを武器にしていきました。1928年には入幕を果たし、1930年の三月場所では10勝1敗を記録、関脇へ昇進します。しかし、同部屋の常ノ花との優勝争いでは運が絡む結果となり、結局幕内最高優勝は常ノ花に譲りました。1931年には大関昇進をかけた武藏山との争いがクローズアップされ、興行も盛況を博しましたが、昇進は武藏山に軍配が上がりました。

春秋園事件の発端

1932年1月、天竜は春秋園で起きた立てこもり事件の首謀者として名を馳せます。力士たちの厳しい生活環境に不安を感じていた彼は、日本相撲協会に改革を求める要求書を提出しましたが、協会からの回答に不満を持ったことから脱退を決意。この行動は後に「春秋園事件」として知られることになります。一時は角界が分裂する事態を招き、多くの力士が新興力士団を結成し、相撲界全体が揺れ動くことになりました。

事件後の影響と関西相撲界の崩壊

春秋園事件の発生により、協会を脱退した力士たちによる新興力士団が旗揚げし、新たな興行を展開しました。これに対し、協会は力士数の不足で試行錯誤を強いられました。結局、事件の影響で大日本関西角力協会は解散し、天竜は責任を取る形で廃業に至ります。しかし彼は、1941年に相撲協会に復帰し顧問に就任します。

戦後の活動

戦後は満州国で相撲の普及と育成に尽力し、後に帰国してスポーツ用品店を開業しました。ラジオ東京で相撲の実況や解説を行い、当時の人気力士たちと共にその名を広めました。また、1957年に衆議院文教委員会に出席すると、協会の昔ながらの体質に警鐘を鳴らします。

晩年と影響

1989年に肺炎のため85歳で他界した天竜三郎は、その生涯を通じて相撲界に多大な影響を与えました。力士としての彼は多くの記録を残したほか、相撲の進化に貢献し、その主張が後の改革につながることになりました。天竜の成績には通算171勝85敗、幕内98勝44敗が含まれ、数々の著書も出版されています。現代の相撲界においても、彼の業績は忘れられることはないでしょう。

もう一度検索