天蓋

天蓋（てんがい）とは

天蓋は、その形状や用途によって複数の意味を持つ言葉です。主に、「白海（びゃっかい）」や「玉蓋（たまがい）」とも呼ばれます。以下に、主な意味合いを解説します。

1. 仏具としての天蓋

仏教においては、仏像や僧侶の頭上に掲げられる笠状の装飾具を指します。その起源は、古代インドで日差しを避けるために用いられた日傘に遡ります。王侯貴族が使用する日傘は豪華な装飾が施され、権威の象徴として用いられていました。

仏教に取り入れられた後、帝釈天が釈迦に日傘を差し掛けたという伝説が生まれました。また、「観仏三昧海経」には、仏の白毫から放たれる光明が天蓋になったという記述があります。仏像に用いられる天蓋は、天井から吊り下げられる装飾具として、仏の徳を象徴するものとされています。

天蓋は、単に尊い者を守る蓋としてだけでなく、「仏の徳が自然と外に現れたものである」とも解釈されます。そのため、天蓋が豪華であるほど、その下にいる仏の徳が深いとされます。また、天蓋を見る者が徳を積み、天蓋を差し掛けてもらえるような人物になることを願う意味も込められています。

天蓋の形状は、長方形、六角形、八角形、円形など様々で、材質は金属や木が主に使用され、彫刻や装飾が施されています。儀式などで僧侶に差し掛ける番傘も、天蓋の一種と見なされます。

2. 虚無僧の笠としての天蓋

虚無僧が被る笠も天蓋と呼ばれます。江戸時代初期、虚無僧は一般的な編み笠を被っていましたが、普化宗の戒律により、世俗との関係を断つため、深い筒型の天蓋を被るようになりました。これにより、誰の前でも笠を取ることが禁じられました。

現在、虚無僧笠を編む職人はごくわずかとなり、貴重な芸術品となっています。時が経つにつれて、イグサの青色が飴色へと変化します。

3. 貴人の覆いとしての天蓋

貴人の寝台、玉座、祭壇、司祭座の上方に設けられる覆いも天蓋と呼ばれます。これは、尊い者を保護し、その権威を示すためのものです。

4. 天文学における天蓋

古代の宇宙観や天文学においては、「天は蓋のように世界を覆っている」という考え方がありました。この概念が天蓋説であり、世界の法則や秩序と密接に結びついていました。また、卵殻型の天が地球を覆っているとする渾天説も存在しますが、両者は明確に区別されず、混同されることもありました。

古代メソポタミアでは、世界が釣鐘型の蓋で覆われているという思想もありました。

その他の天蓋

建築物の庇（ひさし）も天蓋と呼ばれることがあります。これについては、キャノピーという言葉がより一般的です。また、キリスト教のバルダッキーノやユダヤ教のフッパーも、天蓋の一種と見なせる場合があります。

関連情報

東洋思想: 天蓋の概念は、東洋思想における宇宙観や世界観と深く関連しています。
仏教: 仏具としての天蓋は、仏教文化において重要な役割を果たしています。
旧約聖書: 旧約聖書にも、天蓋の概念に関連する記述が見られます。
天蓋山: 天蓋の形状に似た山も存在します。
* キャノピーベッド: 天蓋付きベッドは、装飾的な要素として、現代でも人気があります。

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