天道根命

天道根命について

天道根命（あまのみちねのみこと/あめの-、生没年不詳）は、日本の古代に存在した豪族であり、紀国造の初代として名を馳せました。彼は日本の神話や歴史において重要な役割を果たし、神武天皇の東征に伴って参画したことから、多くの伝説や神社にその名を残しています。

神統譜と子孫

『先代旧事本紀』では、天道根命は神皇産霊尊の子神である天御食持命の「次」であり、川瀬造などの祖と位置づけられます。一方、『新撰姓氏録』では、彼は神魂命の5世の孫とされ、滋野宿祢や紀直、さらには伊蘇氏や楢原氏の祖とも伝承されています。特に、紀国造の末裔である紀俊行氏が所有する「紀伊国造次第」には、彼の子として比古麻命が記されています。

事跡と伝承

天道根命に関する記録には、彼が天照大神の「前霊」として日像鏡と日矛の神宝を高天原で奉斎していたとされる逸話があります。饒速日尊の護衛として32神の一柱として高天原から葦原中国に降臨し、神武天皇により紀伊国の初代国造に任命されたと伝えられています。また、異伝の『紀伊続風土記』では、彼が日前宮で奉祀される両大神に仕え、神武天皇の東征の際にその神宝を運び入れたとも述べられています。これにより、彼は神武天皇から国造としての任命を受け、子孫は紀国造職を継承することとなりました。

降臨の背景

天道根命の降臨については、前述のように饒速日尊に随従する説と、天孫降臨に従う説が存在します。これらの中で、田中卓氏は饒速日尊に従ったという説を重視し、天道根命が天岩戸隠れにおいて鋳造された神宝を奉じて東征に関わったと論じています。彼の降臨の経緯は、神話の中での彼の位置付けを理解する上で重要な鍵となります。

国造職の制度

国造職は、紀伊国造としての天道根命の役割がどのようにして形成されたのか、またそれが時代をどう反映しているのかを考える上での重要なテーマです。一般的に、国造制度は大和王権が地域の支配のために地方の首長層を再編した結果とされ、初代神武天皇の時代における記録は信憑性が低いとする見解も存在します。しかし、紀国造はその形成の初期段階に位置づけられ、彼の任命は国造制の構築における重要な出来事であった可能性があります。

天道根命は歴史的・神話的に見ると、紀伊国造としての地位を築く傍ら、その後の子孫に語り継がれる伝説的な存在となりました。彼の物語は、古代日本の文化や信仰を語る上で欠かせない要素となっています。

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