天野一夫

天野一夫（あまの かずお、1959年 - ）は、日本の美術界において重要な役割を担うキュレーターです。学習院大学大学院博士前期課程を修了後、O美術館の学芸員としてキャリアをスタートさせました。その後、京都造形芸術大学の教授、そして豊田市美術館では学芸員およびチーフキュレーターを歴任するなど、教育機関と美術館の両面でその才能を発揮しています。

天野氏の研究活動は、特に日本美術と東アジア美術の関係性に焦点を当てています。その代表的な研究成果として、「近代の東アジアイメージ – 日本近代美術はどうアジアを描いてきたか」展が挙げられます。この展覧会は、日本近代美術がアジアをどのように捉え、表現してきたのかを深く掘り下げ、美術史における新たな視点を提供しました。この研究は、倫雅美術奨励賞美術史研究部門を受賞し、その学術的な価値が広く認められています。

天野氏が企画した展覧会は、その独創性と深い洞察力で知られています。初期の代表的な企画としては、「書と絵画との熱き時代」展(O美術館、1992年)や「ART IN JAPANESQUE」(O美術館、1993年)があり、日本の伝統的な美術表現と、西洋美術の影響を考察するものでした。また、「「森」としての絵画 – 「絵」のなかで考える」展(岡崎市美術博物館、2007年)では、絵画の本質的な問いに焦点を当て、観る者に深い思索を促しました。さらに、森美術館で開催された「六本木クロッシング2007：未来への胎動」(2007年)では、荒木夏実、佐藤直樹、椹木野衣とともに共同企画を務め、現代美術の新たな可能性を探求しました。豊田市美術館では、自身の研究テーマを基にした「近代の東アジアイメージ – 日本近代美術はどうアジアを描いてきたか」展(2009年)を企画し、国内外から高い評価を得ました。近年では、「変成態―リアルな現代の物質性」展(gallery　αM、2009～10年)など、現代美術の最先端の動向を捉えた展覧会を手がけています。

天野氏は、執筆活動にも積極的に取り組んでおり、『「日本画」 – 内と外のあいだで』（共著、ブリュッケ、1994年）では、日本画の定義や変遷について考察し、『美術史の余白に――工芸・アルス・現代美術』（共著、美学出版、2008年）では、美術史研究における多様な視点や新たなテーマの重要性を指摘しています。また、『復刻版　書の美』（監修、国書刊行会、2013年）では、日本の書道の美しさを再発見し、その文化的意義を再評価しました。

これらの活動を通して、天野一夫は、日本の美術史研究と現代美術の発展に大きく貢献しており、その影響は今後も続くことが期待されます。

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