天鏡閣

天鏡閣について

天鏡閣（てんきょうかく）は、福島県猪苗代町にある有栖川宮家と高松宮家に関連する旧別邸です。この建物は1979年2月3日に国の重要文化財として指定されており、歴史的建築物としての価値が高まっています。

建築の特徴

天鏡閣は、一部3階建てのルネサンス様式が取り入れられた和洋折衷の建築スタイルが印象的です。建物の外観は白い板壁やバルコニーによって特徴づけられており、当時の流行であったビリヤード室や大理石製のマントルピース、豪華なシャンデリアなど、贅を尽くした内装で構成されています。これらの特徴が融合した建物は、優雅さと格式を感じさせます。

「天鏡閣」という名前は、大正天皇が皇太子時代にこの場所に滞在した際、詩人李白の詩「明湖落天鏡」に由来しています。この詩は、猪苗代湖の鏡のような美しい水面を称賛したものと考えられており、落成から100年以上経った現在でも、その美しさを記憶させる場所となっています。しかし周囲の木々が成長したため、湖面を直接見ることはできなくなっています。

歴史的背景

天鏡閣は1908年8月に有栖川宮威仁親王の別邸として完成しました。威仁親王の死後、1922年には高松宮宣仁親王によって妻の静養のための和風別邸が近隣に建設されましたが、残念ながら彼女は翌年に亡くなりました。その後、天鏡閣は高松宮家に継承され、昭和天皇の静養の場としても利用されました。

1947年には、昭和天皇の戦後訪問時の宿泊所となり、多くの皇室メンバーがこの場所を訪れて静養を楽しみました。1952年には福島県に払い下げられ、県の職員研修所として使われるようになりましたが、老朽化したため1971年には使用停止となりました。1979年に国の重要文化財に指定されたことを受けて、1980年には修復工事が行われ、その後一般公開されることとなりました。

公開情報

現在、天鏡閣の本館は年中無休で多くの部屋が公開されており、内部には威仁親王に関連するさまざまな品々が展示されています。この貴重な施設は、訪れる人々に歴史と文化の深い感動を伝えています。

皇室との関わり

天鏡閣は皇室の利用が多かったことで知られています。特に昭和天皇と香淳皇后は、1924年の結婚後に新婚旅行として訪れた地でもありました。さらに、1970年の全国植樹祭に際して再度訪問した際には、当時利用した馬車の展示を見て懐かしい思い出話をしたという記録も残っています。修復後には1984年に再訪し、大婚60年を祝う場ともなりました。

天鏡閣は、ただの歴史的建物ではなく、皇室や地域に深い関わりを持つ文化財として、訪れる人々にその魅力や歴史の重みを感じさせてくれます。

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