天長院 (長野県大桑村)

天長院の歴史

天長院は、長野県木曽郡大桑村長野に位置する臨済宗妙心寺派の寺院です。山号を地久山と称し、木曾西国三十三観音霊場の第二十二番札所としても知られています。

草創期の廣徳寺

かつて、大桑村の伊奈川菊野平には、木曾氏の祈願所であった天台宗の古刹、菊名山 廣徳寺が存在していました。しかし、天文年間（1532～1555年）に武田氏の兵、または山賊によって焼討に遭い、寺は大きな被害を受けました。この時、地元の人々が弥勒菩薩、薬師如来、不動尊、そして大般若経600巻を運び出し、難を逃れました。弥勒菩薩は後に堂宇が建てられ、伊奈川神社の創始に関わることになります。また、不動尊は下の家で安置されました。

天長院の開基

元和年間（1615～1624年）、伊奈川の慶山賀公が、この薬師如来を本尊として、定勝寺四世の天心宗球を勧請開山に迎え、廣徳寺の跡地に天長院を開基しました。これにより、薬師如来が祀られることとなりました。その後、中山道の変遷により、伊奈川の地が不便になったため、寛文年間（1661～1673年）に、慶山賀公の弟子の雲漢龍公が、地蔵堂のあった現在地に移転し、薬師堂を建てて薬師如来を遷しました。さらに田地を寄進し、寺の基盤を確立しました。

その後の発展

寛保元年(1741年)には梵鐘が鋳造されましたが、太平洋戦争時に供出され現存していません。鐘銘には、鋳造年や関係者の名前が記されていました。その後、天明6年(1786年)には梵鐘の音漏れのため改鋳、寛政7年(1795年)10月には庫裏の老朽化に伴い再建が開始され、寛政8年(1796年)6月に完成しました。

文化7年(1810年)には、弓矢村の久保地利兵衛が亀屋の田地を寄進し、寺の基盤をより強固なものとしました。天保11年(1840年)1月には、本堂と山門が再建され、山門には古瀬金右ヱ門の名が刻まれています。昭和18年(1943年)には、梵鐘が太平洋戦争で供出され失われましたが、昭和30年(1950年)4月25日に十六世の大興恵海によって新鋳され、開眼されました。

境内

天長院の境内には、以下の建物や施設があります。

本堂
山門
庫裡
玄関
十王堂
木小屋
鐘楼

寺宝

天長院には、歴史的な価値のある寺宝が数多く所蔵されています。

薬師如来像：背面に「応永丙午卅三季　六月廿九日　施主　乾綱　廣徳寺」と記されています。
十王像ほか十三体：底部に「宝暦十一年二月」と書かれています。
達磨像：背面に「天保六年十月五日　導師　定勝寺　東齢和尚　宗義代」と記されています。
大般若経：第一巻の奥書に「右　信刕筑摩郡木曾庄大野里一、大般若全部眞言宗廣徳寺什物」と記載されています。
涅槃図：裏書に「宝暦五年二月十五日開帳　導師定勝寺十七代　天齢和尚玄礎代」とあります。
* 十六善神画：箱の中に「応永丙午卅三季　六月廿九日」と書かれています。




天長院は、その長い歴史の中で、多くの人々の信仰に支えられてきました。現在も地域の人々の心のよりどころとして、その存在は大切にされています。

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