定勝寺

定勝寺は、長野県木曽郡大桑村須原にある臨済宗妙心寺派の寺院です。山号を浄戒山と称し、木曽西国三十三観音霊場二十一番札所、木曽七福神霊場（布袋尊）としても知られています。この寺は、その長い歴史と貴重な文化財により、多くの人々を魅了しています。

歴史

定勝寺の創建は、嘉慶年間（1387年 - 1388年）に木曾親豊が先祖の追善のため、須原観心坊を改め、木曽川河畔に寺として建立したのが始まりとされています。開山は初屋と伝えられています。

創建当初の建物は、文安5年(1448年)に木曽川の氾濫によって流失してしまいましたが、享徳3年(1454年)に木曾家賢によって再建され、鎌倉浄智寺の香林恵巖が中興開山として寺の復興に尽力しました。

その後も、永禄4年(1561年)の大洪水で再び流失するなどの災難に見舞われましたが、天正7年(1579年)には六世の玉林聖賢が上松義豊の上松館の隣に玉林院を開山し、寺の法灯を守りました。

天正18年（1590年）木曾義昌が徳川家康の関東移封に伴い木曽谷を離れると、豊臣秀吉の重臣であった石川光吉が木曾代官として入りました。石川光吉は、木曽氏ゆかりの定勝寺・興禅寺・長福寺の三箇寺に対し、寺領を安堵するなどの保護を加えました。

文禄4年(1595年)には、再び木曽川の大洪水で寺は流損しましたが、慶長3年（1598年）、石川光吉が木曾義在の居館跡に現在の伽藍を建立しました。この場所は、かつて「寺中島」と呼ばれていた河原であり、その後の移転の経緯が『吉蘇志略』に記録されています。

江戸時代には、秋里籬島によって描かれた『木曽路名所図会』にその全景が描写されています。

明治13年（1880年）には、明治天皇が中山道御巡幸の際に庫裏の書院で昼食をとられたという記録も残っています。

昭和24年（1949年）には、山門・本堂・庫裏が桃山文化の特色を持つとして国の重要美術品に認定され、昭和27年（1952年）には国の重要文化財に指定されました。

定勝寺は、木曽町の興禅寺、長福寺とともに木曽三大寺の一つとも言われています。

また、日本最古の「蕎麦切り」に関する文書が発見された場所としても知られています。さらに、戦国時代の武将である木曽義昌の位牌や、木曽ヒノキで作られた「定勝だるま」大坐像が安置されています。

平成5年（1993年）には、小口基實によって枯山水庭園が作庭され、寺に新たな趣を加えています。

境内

定勝寺の境内は二千八百九十坪の広さを誇ります。山門をくぐると、本堂と庫裏が並び、その壮大で美しい姿が訪れる人々を魅了します。特に、庫裏の白壁と黒い木組みの調和は、見る者を圧倒します。

山門

文化財の項に詳述しますが、万治4年（1661年）に建立された切妻造、檜皮葺の四脚門です。

本堂

本堂は、幅広い板敷が特徴で、鴬張りとなっています。方丈形式で、中央に仏間、左に上間（書院）、右に下間があります。仏間には釈迦如来像が安置され、上間には木曽ヒノキで彫られた達磨大師像が安置されています。

庫裏

庫裏は、参拝者に開放されており、土間と広い板の間には大きな炉があります。天井は張られておらず、屋根裏の梁組みが堂々としています。

庫裏附渡り廊下・玄関

東側居間には書院、次の間には違い棚があり、御座の間には床と書院が設けられています。入側に面した障子と竪桟菱欄間が禅寺の雰囲気を醸し出しています。

位牌堂

大正末期から昭和初期にかけて、檀信徒の位牌を安置するために本堂の裏に建てられた妻入り瓦屋根の建物です。用材にはケヤキ材が使われ、須弥壇も同時に建築されました。

宝蔵

昭和5年（1930年）に穀蔵を解体し、移転の形で新築された土蔵です。

阿弥陀堂

昭和7年（1932年）に位牌堂の新築材の残材を使用して建てられました。

鐘楼堂

昭和8年（1933年）に建て替えられた鐘楼堂には、人間国宝の香取正彦作の大梵鐘があります。

その他、境内には樵月斎、木小屋、十王堂、冠木門などがあります。

文化財

定勝寺は、以下の文化財を所蔵しています。

重要文化財（国指定）

山門：万治4年（1661年）建立。切妻造、檜皮葺の四脚門。
本堂：江戸時代前期（1615～1660年）建立。桁行19.0ｍ、梁間12.2ｍ、一重、入母屋造、銅板葺。
庫裏附渡り廊下、玄関：承応3年（1654年）建立。桁行21.9ｍ、梁間14.0ｍ、一重、切妻造、南面庇付、妻入、銅板葺。

寺宝

多数の画軸や木像が所蔵されており、中には著名な画家や仏師による作品も含まれます。

画軸

文殊ノ画（呉道子筆、木曾親豊寄附）
十王ノ画（陸信忠筆、木曾親豊寄附）
十六羅漢ノ画（禅月大師筆、木曾家賢寄附）
観音ノ画（牧谿筆、木曾家賢寄附）
梅ノ画（揚補之筆、木曾義昌寄附）
山水ノ画（米元章筆、木曾義昌寄附）
龍虎ノ画（牧渓筆、木曾義昌寄附）
十六善神ノ画（兆殿司筆）
達磨ノ画（狩野元信筆）
朱衣達磨ノ画（石川光吉寄附）

木像

本尊仏（釈迦三尊、室町時代の作）
韋駄天像（鎌倉時代の作）
十三仏像（文明16年(1484年)木曾家盛寄進）
十王仏像（一体に貞享2年(1685年)銘）
達磨大師像（元禄5年(1692年)銘）
開山像（享保年間に安置）

定勝寺文書

中世の古文書を多数所蔵しており、歴史研究においても貴重な資料となっています。

末寺

天長院 (長野県大桑村)
池口寺 (長野県大桑村)
妙覚寺 (長野県大桑村)
臨川寺 (長野県上松町)
玉林院 (長野県上松町)

アクセス

JR東海中央本線須原駅から徒歩約10分。

参考文献

『大桑村誌　下巻』
『大桑村の歴史と民話』
『図説・木曽の歴史』
『寺と神社(信州の文化シリーズ)』
『探訪・信州の古寺　第Ⅲ巻　＜禅宗＞』

外部リンク

参考サイト - ウェイバックマシン
文化遺産オンライン　定勝寺本堂
庭園ガイド　定勝寺

定勝寺は、その豊かな歴史と文化に触れることができる、貴重な場所です。ぜひ一度訪れてみてください。

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