天雷 (航空機)

天雷（J5N）

天雷は、日本海軍の戦闘機として知られており、記号は「J5N」です。日本の航空機技術の発展を象徴する存在であり、その開発の背景には戦時中の厳しい戦術的要求がありました。

歴史的背景

天雷の起源は「十三試双発陸上戦闘機」と呼ばれる試作機に遡ります。横須賀海軍航空隊のテストパイロット、小福田晧文によると、当時の戦闘機隊が独自に遠距離出撃を行うことは、航法や通信能力の面で難しかったため、より多機能な機体が必要とされました。これに応じて、戦闘機と陸上攻撃機の特性を併せ持つ新たな機体の開発が決定されたのです。

1941年には試作第一号機が完成しました。この機体は二基の千二百馬力のエンジンを搭載し、操作は3名の乗員によって行われました。前方には固定式の7.7ミリ機銃が2挺、後方には連装機銃が4挺装備されており、戦場での航空支援を見越した設計でした。しかし、機体設計が予想以上に重くなり、満足のいく性能を発揮できませんでした。結局、日米開戦時には純粋な機種の増産が優先され、このような機体は開発の優先順位が低下しました。

天雷の開発

1943年1月、局地戦闘機にあたる新たな開発が決定され、中島飛行機に「天雷」の試作が命じられました。海軍からの要求事項は、エンジンが「誉21型」で出力1990馬力を必要とし、最大速度は667km/h、高度6,000mまでの上昇時間は6分以内、武装には20mmと30mm機銃を各2挺装備するものでした。これに応じ、中島飛行機は軽量化と操縦性向上のため、さまざまな改良を行い、わずか1年2ヶ月で試作一号機が完成しました。

しかし、試験飛行では振動や油漏れといった問題が現れ、最大速度は597km/hに留まり、高度6,000mまでの上昇にも8分を要するなど、要求を満たすことができませんでした。なぜなら、海軍の過度な要求が影響し、機体重量が増加しすぎたからです。結果的に操縦性は良好であったものの、全体的な性能は期待を下回りました。

終焉とその後

1944年秋、天雷は海軍による試作機開発の対象から外れ、わずか6機のみが製造されました。その後、いくつかの機体は複座型に改造され、夜間戦闘機型としてテストが行われました。戦後にはアメリカに接収され、現在でもその一部は保管されています。

技術仕様

天雷（J5N1）の主な技術仕様は以下の通りです：

• - 乗員: 1名（または2名）
• - 発動機: 中島誉21型空冷2重星形18気筒、出力1990馬力
• - 全長: 11.46m
• - 全幅: 14.40m
• - 全高: 6.27m
• - 主翼面積: 32.00m2
• - プロペラ: H.S.定・3翅
• - 全装備重量: 7,300kg
• - 最高速度: 597km/h
• - 航続距離: 2,720km
• - 実用上昇限度: 10,800m
• - 武装: 20mm機銃×2、30mm機銃×2

天雷はその技術的な試行錯誤の中で、航空機開発史に名を刻んだ機体です。

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