天龍寺船

天龍寺船の詳細

天龍寺船（てんりゅうじぶね）は、南北朝時代における日本の重要な貿易船であり、京都の天龍寺を建設するために室町幕府の承認のもと元に派遣されました。これは、当時「造天龍寺宋船」とも呼ばれていた船で、歴史的文脈の中で非常に重要な役割を果たしました。

背景

後醍醐天皇が延元4年（1339年）に崩御した後、北朝の将軍足利尊氏はこの皇帝の菩提を弔うため、天龍寺の創建を決断しました。尊氏は夢窓疎石の勧めに従い、嵯峨野の亀山殿を禅院に改めて天龍寺を創建することとし、多くの寺領を寄進しました。しかし、室町幕府は南朝との戦いの影響で財政難に陥っており、造営に必要な資金を確保するのは極めて困難な状況でした。

造営資金の苦難

幕府は当初、安芸・周防の公領からの収入を造営資金に充てる計画を立てましたが、戦争によって公領からの年貢は滞り、巨額の資金を集めることができませんでした。このため、朝廷の成功した売官制度を利用し、「天龍寺造営記」によれば官職100人分が造営資金として使われる計画が立てられました。それでも資金は不足していました。

船の派遣計画

南北朝時代ですら、対立が続く中、足利直義は武家・公家・寺社間の利益衝突の緩和策として、天龍寺の建立を支持し、夢窓とともに寺社造営料唐船の派遣を計画しました。しかし、当時は倭寇事件の影響で元側が日本船に対して警戒心を強めており、繁栄する貿易路は影を潜めていました。

それでも夢窓の執念により、1342年の冬、直義は1艘の宋船を派遣し、貿易の成果を天龍寺の建設に利用することを提案しました。船長には博多の商人、至本が推挙され、彼は船の交易が成功しなくても、帰国時に5000貫文を納めると約束しました。計画通り、彼らは1342年8月に出航しました。

成功した交易

1342年10月に明州に入港した天龍寺船は、当初海賊船と疑われながらも無事に上陸し、交易に成功しました。この交易は、前回の住吉社造営料唐船の派遣から10年ぶりのことでした。特に、この時代の禅僧間の交流は活発であり、さまざまな僧が天龍寺船に乗船しましたが、元の官憲による制約から、入国を果たしたのはわずか11名でした。

建設の進行と慶祝

天龍寺船がもたらした莫大な利益を基に、天龍寺の建設は順調に進み、1343年11月には完成を迎えました。1345年には後醍醐天皇の七回忌に合わせて落慶供養が行われ、天龍寺はその名声を知らしめることとなったのです。

参考文献

• - 村井章介, 『港町と海域世界』, 青木書店, 2006年
• - 山川出版社, 『日本歴史大系 2 中世』, 1985年
• - 早島大祐, 『室町幕府論』, 講談社選書メチエ, 2010年

このように、天龍寺船は南北朝時代の日本において、貿易を通じて財を蓄え、文化と歴史に大きな影響を与える存在でした。

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