太平洋序曲

『太平洋序曲』について

『太平洋序曲』（たいへいようじょきょく）は、スティーヴン・ソンドハイムの音楽とジョン・ワイドマンの脚本によるミュージカルで、1853年の日本を背景にしています。本作は、日本が西洋化に向かう過程での苦悩を日本側の視点から描いています。特に、二人の友人の出会いとその後の関係の変化を通じ、急速な変貌を遂げる時代の葛藤が綴られています。

タイトルにある『序曲』は、音楽において初めに演奏される曲を指しますが、ここでは西洋の進出が実際には平和的な交渉とはほど遠いものであったことへの皮肉が込められています。音楽的には、日本独特の五音階を取り入れ、日本的な沈思黙考と西洋的な率直さとを対比させ、ソンドハイムの音楽的な野心が表現されています。

初演と演出

1976年にブロードウェイで初演され、ハロルド・プリンスの演出が話題となりました。この公演では、男性が女性役を演じたり、観客に見える形で黒衣が舞台を操作するなど、歌舞伎の影響を受けた斬新な演出が行われました。その結果、賛否が分かれる批評を受けたものの、トニー賞には10部門にノミネートされ、最優秀舞台デザイン賞と衣装デザイン賞を受賞しました。

上演開始から約6ヶ月後にその初演は終了しましたが、オリジナル作品は高く評価され、特にソンドハイムの音楽がその後の多数の作品に影響を及ぼすこととなります。

物語の概要

第1幕

物語は1853年の日本、外国勢力が接近してくる中で始まります。日本では平穏な日々が広がっている一方で、米国のペリー提督が日本を開国させるために艦隊を派遣します。この出来事をきっかけに、将軍は事態の打開を図るものの、困難な選択を強いられます。国際的な圧力の中で、夫を失った妻、たまての悲しみとともに、日本人の価値観や生活様式の変化が描かれます。

第2幕

時代が進む中、新たな将軍の時代となり、各国の提督たちが日本に進出してきます。香山は西洋化を受け入れつつも、友情や価値観の変容に苦しむことになります。物語は、友情と裏切り、小さな喜劇的な出来事が引き起こす混乱の中で、日本が近代国家へと成長していく過程を描いています。

批評評価

初演当時、『ニューヨーク・タイムズ』は作品を高く評価したものの、同時にその文化的意味の不明瞭さを指摘する声もありました。特に、楽曲「木の上の誰か」はソンドハイム自身が最も好きな曲の一つとして知られ、作品全体の深い考察や美しさが称賛されました。

受賞歴

オリジナル・ブロードウェイ公演では、トニー賞に10部門でノミネートされるなど、多数の賞を受賞し、その後のミュージカル作品に多大なる影響を与えることとなりました。

『太平洋序曲』は、演出的にもキャスティングにも新たな挑戦を試みた名作であり、作品が持つ文化的背景や音楽の深みが、観客に感動を与え続けています。

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