太田家元九郎

太田家元九郎

太田家 元九郎（おおたや がんくろう、本名：太田 元）は、落語協会に所属していた津軽三味線漫談家です。1954年（昭和29年）1月3日に生まれ、2014年（平成26年）7月18日に惜しまれつつ世を去りました。寄席の舞台において、津軽三味線を主体とした芸を披露する稀有な存在でした。出囃子には『津軽甚句』を用い、紋は『丸に桔梗』を使用していました。

人物と芸風

太田家元九郎は、寄席の世界で津軽三味線を核とした芸を確立した、ほぼ唯一無二の存在でした。彼の芸は、生まれ故郷である青森の津軽弁を巧みに用いた漫談と、力強い三味線の演奏を組み合わせた独自のスタイルが特徴です。漫談の合間に三味線による「曲弾き」を挟み込み、観客を惹きつけました。特に知られる代表的なネタの一つに、津軽三味線奏者として海外の放送局などに招かれた際のエピソードを語るものがあります。これは、現地の外国人から自国の音楽を三味線で演奏してほしいと頼まれた際の出来事を回想するという設定で展開され、まるでその場に居合わせるかのように語りながら、様々な国の音楽を三味線で演奏してみせるというものです。このネタに入る前には、「断ることができねぇんだ。何ったって日本、代表だかんな」と津軽弁で力強く前置きを述べ、観客の期待感を高めました。そして、クライマックスには迫力ある「じょんから節」をしっかりと聴かせ、観客に深い印象を残して締めくくりました。

略歴

太田家元九郎、本名太田 元は、1954年（昭和29年）、青森県東津軽郡今別町に生を受けました。故郷で青春時代を過ごし、1972年（昭和47年）に青森県立今別高等学校を卒業します。その後、海上自衛隊に入隊するという異色の経歴を持ち、敷設艦「つがる」に乗艦していました。自衛隊を除隊したのは1977年（昭和52年）のことです。除隊後、彼は芸能の世界へと進み、菊池武氏の内弟子として修行を積みました。修行を終えた後、上京を果たし、浅草にある民謡酒場「七五三」などで津軽三味線を演奏する活動を始めます。1987年（昭和62年）には、自身の会である「三元会」を家元として立ち上げ、活動の場を広げました。やがて、寄席演芸の場にも進出し、1999年（平成11年）には三代目古今亭志ん朝一門の客分という形で落語協会に加盟を果たします。同時期には、ボーイズバラエティ協会にも籍を置いていました。長年にわたり津軽三味線漫談家として活躍した彼は、2014年（平成26年）7月18日午後8時24分、脳出血のため、東京都文京区の病院でその生涯を閉じました。享年60歳でした。

メディア出演など

太田家元九郎は、寄席での活動だけでなく、ラジオなどのメディアにも出演し、その芸を広く届けました。NHKラジオ第1放送の「真打ち競演」や、JRN系列の「ラジオ寄席」などに出演経験があります。

彼は後進の指導にもあたっており、落語家である林家木久扇氏の弟子、林家ひろ木氏は、落語とは別に津軽三味線の弟子として太田家元九郎に師事しました。

関連項目

• - 柳月三郎
• - 松乃家扇鶴
• - 柳家紫文
• - 暁照雄
• - 林家ひろ木（弟子）

もう一度検索