太田清蔵 (5代目)

太田清蔵（5代目）（1893年8月11日 - 1977年7月13日）は、日本の実業家であり、東邦生命保険の会長、社長を務めました。幼名は新吉。先代である4代目太田清蔵の長男として、福岡県福岡市に生まれました。

生い立ちと学歴

幼少期に「新吉」から「清蔵」へと改名。1912年に福岡県立中学修猷館を卒業後、第五高等学校英語法律科に進学。1919年には東京帝国大学法科大学経済学科を卒業しました。その後、三井銀行に入行し、実業家としてのキャリアをスタートさせます。

実業家としての活動

1921年、金融業視察のため欧米に出張。帰国後、福岡銀行副頭取を経て、第一徴兵保険社長、改組後の新日本生命社長に就任。1947年には新発足の東邦生命社長となり、25年間その職を務めました。この間、生保土地監査役、生保証券会長、日本共立火災、大倉火災海上、千代田火災海上の各取締役を歴任。生命保険集会所理事、生命保険協会理事会副会長、日本電化工業取締役、日本電化工業会長、日本鋼管監査役など、多岐にわたる企業の役員を兼任しました。また、松屋呉服店、松屋留萠鉄道科学研究所各取締役、中小企業助成銀行監査役も務めています。1955年に黄綬褒章、1961年に紺綬褒章を受章。

福岡市の経済発展への貢献

東邦生命の社長を務める傍ら、福岡の経済発展にも尽力。大丸を福岡に誘致し、1953年に開業した博多大丸の初代社長に就任しました。さらに、西日本鉄道やRKB毎日放送の取締役も務め、福岡市の経済発展に大きく貢献しました。

浮世絵コレクターとして

修猷館時代には、同期の児島善三郎や2年後輩の中村研一らと共に絵画同好会「パレット会」を結成し、絵画に熱中していましたが、父親の反対により画家への道を断念。その情熱は後に浮世絵へと向かいました。

東京帝国大学卒業後、三井銀行に3年間勤務したのち、1922年から1年間、新婚の妻を伴い欧米を視察。この旅行で、欧米における浮世絵の高い評価を目の当たりにし、その美術的価値に感銘を受けました。第一次世界大戦後の円高も手伝い、余裕のある旅行の中で、美術館や博物館に展示された質の高い浮世絵に触れ、その魅力に深く惹かれていきました。

帰国後、本格的に浮世絵の蒐集を開始。1923年にはシカゴ美術館で浮世絵が日本の代表的な絵画として扱われていることを確認しましたが、江戸末期から明治にかけて大量の浮世絵が海外に流出していた実情を嘆き、昭和の初めから半世紀以上にわたり、約12000点にも及ぶコレクションを築き上げました。そのコレクションは日本屈指と噂されながらも、生前は家族にもその全貌を明かさず「幻のコレクション」とされていました。

太田記念美術館

太田清蔵の死後、遺族はその遺志を継ぎ、コレクションの一般公開を決意。1980年、原宿・表参道に浮世絵専門の美術館として太田記念美術館が開館しました。これにより、太田清蔵が長年蒐集した貴重な浮世絵コレクションが、広く一般に公開されることとなりました。

もう一度検索