東邦生命保険

東邦生命保険相互会社とは

東邦生命保険相互会社（英語名: Toho Mutual Life Insurance Company）は、かつて存在した日本の生命保険会社です。1999年6月に経営破綻し、保有していた保険契約は外資系のAIGエジソン生命保険（現ジブラルタ生命保険）に引き継がれました。

かつての本社ビルは、渋谷区金王坂の「東邦生命ビル」が「渋谷クロスタワー」として、銀座の「銀座東邦生命ビル」は建て替えられ商業施設「ZOE銀座」となっています。これらの建物は、東邦生命の歴史を物語る象徴的な存在です。

東邦生命の歴史

東邦生命の前身は、1898年（明治31年）5月に設立された「徴兵保険」です。徴兵保険は、満期を徴兵年齢とする保険商品で、戦前独特の社会情勢を反映したものでした。設立当初は経営危機に瀕していましたが、1909年（明治42年）に太田清蔵（4代目）が経営を引き継ぎ、無報酬での再建に尽力しました。

4代目の手腕により、徴兵保険の契約は順調に伸び、経営は安定化しました。その後、徴兵保険は「第一徴兵保険」に社名を変更しました。4代目の後を継いだ長男の清蔵（5代目）は、1936年（昭和11年）に社長に就任。終戦後、社名を「新日本生命保険」に変更し、一般の生命保険事業に転換しました。1947年には、社名を「東邦生命保険」と改めて新たなスタートを切りました。5代目は、その後25年間社長を務め、その間、浮世絵コレクターとしても知られ、そのコレクションを基に太田記念美術館が開館しています。

その後、弟の辯次郎が社長に就任し、1975年（昭和50年）には渋谷駅前に本社ビルを竣工させました。1977年（昭和52年）には、甥の清蔵（6代目）が社長の座を継ぎました。

東邦生命は、自衛隊施設への営業活動に力を入れており、自衛官世帯の契約が多いことで知られていました。他社では協栄生命のみが同様の営業活動を行っていました。6代目の時代には、終身個人年金や労働組合向けの保険をいち早く販売するなど、先進的な商品開発も行っていました。しかし、バブル期に販売した高利回り保険の負担や解約が増加し、1993年（平成5年）には経常赤字に転落しました。

6代目は、幅広い人脈を持ち、異色の経営者として知られていましたが、その人脈の中には、仕手グループとの関係やリッカー倒産劇の際の後始末役としての側面も含まれており、単に華麗な閨閥だけではない、複雑な人物像でした。

経営悪化と破綻

1995年（平成7年）7月、6代目が社長を辞任し、太田一族による東邦生命の支配は終焉を迎えました。

1997年（平成9年）には、株価の下落による運用株式の評価損、融資先の不良債権、そして予定利率の逆ざやが重なり、東邦生命の財務状況は急速に悪化しました。このため、アメリカのGEキャピタルと資本提携し、新旧分離型の経営再建を目指しました。

具体的には、東邦生命とGEキャピタルの合弁で「GEキャピタル・エジソン生命保険」を設立し、東邦生命の新規募集事業と営業部門をエジソン生命に移管、東邦生命は既存契約の保全管理に専念することとなりました。新規契約はエジソン生命が行い、その再保険を東邦生命にかけることで、東邦生命の財務改善を目指しましたが、経済状況の悪化により、この再建策は失敗に終わりました。

1999年（平成11年）3月期決算で債務超過が確実となり、東邦生命は劣後ローンの調達や「東邦生命ビル」の売却を行いましたが、経営状況を立て直すことはできませんでした。

1999年6月4日、東邦生命は2000億円を超える債務超過が確定し、金融監督庁から業務停止命令が発令され、経営破綻しました。

破綻処理では、GEキャピタルがスポンサーとなり、GEキャピタル・エジソン生命が受け皿会社となりました。生命保険契約者保護機構とエジソン生命の拠出金により、養老保険などの責任準備金は一部削減、個人年金保険などの予定利率は引き下げられましたが、死亡保障などは保護され、契約はGEエジソン生命（現ジブラルタ生命保険）に引き継がれました。

沿革

1898年（明治31年）5月1日 - 徴兵保険株式会社として設立
1924年（大正13年）12月24日 - 第一徴兵保険株式会社と改称
1945年（昭和20年）9月28日 - 新日本生命保険株式会社と改称
1947年（昭和22年）11月1日 - 新日本生命保険相互会社設立
1947年（昭和22年）12月1日 - 東邦生命保険相互会社と改称
1999年（平成11年）6月 - 経営破綻

関連事項

東邦生命の歴史には、様々な企業や人物が関連しています。

西日本鉄道：4代目太田清蔵が創業に参画し、社長を務め、西鉄の名付け親となりました。
あみだ池大黒：先代会長が5代目太田清蔵の次男と義兄弟の関係にありました。
科研製薬：6代目太田清蔵の弟が社長を務め、東邦生命が経営破綻するまで筆頭株主でした。
岩崎家：三菱財閥の創業家であり、東邦生命と縁戚関係にありました。
THE ALFEE|THE_ALFEE：1996年頃、東邦生命のイメージキャラクターを務めました。
東京ドーム：前身の後楽園球場時代からフェンス広告のスポンサーでした。

まとめ

東邦生命保険は、明治期から平成にかけて日本の生命保険業界で存在感を示した企業でした。独自の戦略と商品開発で成長を遂げましたが、バブル崩壊後の経済状況の変化に対応できず、経営破綻に至りました。しかし、その歴史は、日本の生命保険業界の変遷を語る上で重要な一部分となっています。

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