中村研一

中村研一について

中村研一（なかむら けんいち）は、1895年5月14日に福岡県宗像郡南郷村光岡で生まれた日本の洋画家です。彼は、日本芸術院の会員であり、その作品は近代日本の美術において重要な役割を果たしました。

経歴

中村は鉱山技師の家庭に生まれ、父は住友本社で鉱山技師長を務めていました。彼には洋画家の中村琢二という実弟がいます。1909年には福岡県立中学修猷館に入学し、ここで三輪寿壮や日高信六郎などと友人となります。彼らは「パレット会」という絵画同好会を結成し、西洋絵画を学んでいくことになります。また、この頃には青山熊治から指導を受けることもありました。

1914年に修猷館を卒業した後、中村は美術学校への進学を希望しましたが、父の反対に遭い、第三高等学校の受験準備の名目で京都に出て鹿子木孟郎の内弟子となります。1915年には父を説得し、美校受験を許可され、上京後に本郷絵画研究所に入所、同年4月に東京美術学校西洋画科に入学しました。岡田三郎助の教室で学びながら、彼は1919年に第8回光風会展に『お茶の水風景』を出品し、初めて入選を果たしました。

1920年には東京美術学校を卒業し、同年の第2回帝国美術院展覧会に出品した『葡萄の葉蔭』が初入選します。続く年には『若き画家』が東京大正博覧会で3等賞を受賞し、1921年には『涼しきひま』が第3回帝展で特選を受賞しました。1922年に彼は帝展無鑑査の資格を得たことも大きな成長を示す出来事でした。1923年にはパリに留学し、モーリス・アスランの指導を受け、大いに影響を受けました。

1928年に帰国すると、彼の滞欧作『裸体』が第9回帝展で特選を受賞し、1929年には『若き日』が第10回帝展で特選を重ねて受賞します。1930年には『弟妹集う』が第11回帝展で帝国美術院賞を獲得し、その後は帝展の審査委員としても活動します。また、戦時中には藤田嗣治らと共に軍の委嘱を受ける形で作戦記録画を制作しました。1942年にはシンガポールからの旅行中にコタ・バルに滞在し、そこで制作した作品が新文展で受賞を果たしました。

戦後の活動と影響

戦後、中村の作品9点がGHQによって没収されましたが、1970年にこれらの作品はアメリカから無期限貸与の形で返還されました。代々木の住まいやアトリエは東京大空襲によって焼失しましたが、小金井市に移住後、日展や光風会展を中心に作品を発表し続けました。1950年には日本芸術院会員に推挙され、1958年には日展常務理事に就任しました。

彼の作品は写実主義を基盤としており、感情や情緒を付加せずに純粋なデッサン力と構成力で描かれるスタイルが特徴です。特に妻をモデルにした婦人像や裸婦像が多く制作され、これらが昭和新写実主義の代表的な作品となっています。

1967年8月28日、胃癌により東京の国立癌センターで亡くなりました。享年72で、彼の死後、政府から従四位勲二等瑞宝章が贈られました。1989年には妻の富子によって「中村研一記念美術館」が設立され、後に小金井市に寄贈され、2006年には「中村研一記念小金井市立はけの森美術館」として開館しました。彼の作品は今も多くの人に愛され、語り継がれています。

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