太陽のない街

太陽のない街

『太陽のない街』は、徳永直によって1929年に発表された日本の小説であり、作者自身が経験した共同印刷争議を題材としています。この作品は、当時の労働者階級の生活や闘争をリアルに描き出し、プロレタリア[[文学]]の代表作として知られています。

小説の概要

小説は1929年6月号から雑誌『戦旗』に連載されました。物語の舞台は、東京市小石川区（現在の文京区）の印刷工場周辺に広がる貧民街です。この地域は、台地間の水田や湿地が埋め立てられ、労働者たちが暮らす劣悪な環境が形成されていました。小説は、このような場所で繰り広げられる労働争議の様子を、生々しく描いています。

あらすじ

物語は、大同印刷（共同印刷をモデルにしている）で発生した労働争議を中心に展開します。争議は長期化し、労働者たちは官憲や会社の妨害に苦しみながらも、団結して闘います。争議団幹部の萩村は、争議の継続のため奔走します。婦人部員の春木高枝は、妹の加代とともに、警察に拘束されるも、釈放されます。しかし、帰宅すると家には父と妹の姿がなく、妹の加代は妊娠していることが判明します。加代は、社長への傷害未遂で逮捕された萩村の部下宮池の子を宿していたのです。二人は弁護士に依頼し、警察との交渉を進めます。その帰り道、カフェーでやくざ者に襲撃され、萩村は重傷を負います。萩村が療養中に、王子製紙工場でも争議が発生し、多くの労働者が拘束されます。会社はスト破りを使って操業を再開し、争議団員は解雇されます。傷が癒えた萩村は、争議団の現状を見て、その困難さを痛感します。

主要登場人物

春木高枝: 争議団の婦人部員で、勝気な性格の持ち主。
春木加代: 高枝の妹で、物語の中で妊娠する。
春木姉妹の父親: 元大同印刷の職工で、病を患っている。
大宅のぶ子: 争議団の婦人部長。
萩村: 争議団の幹部で、特務班長。
宮池三郎: 争議団の特務班員で、加代の恋人。
* 大川: 大同印刷の社長。

評価

本作は、労働争議の現実を克明に描写したことで、発表直後から文壇で高い評価を得ました。蔵原惟人や川端康成もこの作品を賞賛し、徳永はプロレタリア[[文学]]の旗手として注目されるようになりました。一方で、物語の虚構性や人物造形については、批判的な意見も存在します。

絶版をめぐって

戦時体制が厳しくなる中、作者は1937年に本作の絶版を表明しました。これは、徳永が執筆禁止から逃れるための処置だったと指摘されています。戦後、絶版は撤回され、1950年には岩波文庫に収録され、作者による解説が加えられました。

翻訳と海外への紹介

この作品は、ドイツ語、ロシア語、チェコ語、ルーマニア語に翻訳され、海外でも紹介されています。また、ミシガン大学の教授らによって研究もされています。

主な書籍

この小説は、複数の出版社から様々な形で出版されており、多くの全集や文庫にも収録されています。

関連文献

この作品に関する研究や評論は数多く存在し、作者自身の回想や、当時の時代背景に関する分析が行われています。

舞台

1930年には、左翼劇場によって舞台化されました。その後も何度か再演され、1946年には新協劇団が、1970年には東京芸術座が上演しています。正木喜勝の研究では、初期の左翼劇団による上演分析も行われています。

映画

1954年には、山[[本薩夫]]監督によって映画化されました。日高澄子が主演を務め、チェコスロバキア国際映画祭で名誉賞を受賞しています。映画は、小説の内容を忠実に再現し、当時の労働者の過酷な生活を描いています。

『太陽のない街』は、日本のプロレタリア[[文学]]を代表する作品として、今もなお多くの人々に読み継がれています。そのリアリズムと社会描写は、現代においても重要な意味を持ち続けています。

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