失われた大陸 (E・R・バローズ)

『失われた大陸』

エドガー・ライス・バローズによる米国のSF小説『失われた大陸』（原題: The Lost Continent）は、初めて1916年に「30度線の彼方」というタイトルでオール・アラウンド・マガジンに掲載され、その後1957年に現在のタイトルに改めて単行本化されました。この作品は、2137年の未来を舞台にしており、パン=アメリカ連邦が南北アメリカ大陸を統一し、残りの世界を「失われた大陸」と呼んでいる状況を描いています。

物語の主人公は、アメリカ海軍の大尉、ジェファースン・タークです。彼は、子供の頃からヨーロッパ大陸への憧れを抱いていましたが、アメリカの法律により東半球に侵入することは反逆罪とされていました。アメリカでは、20世紀にヨーロッパで発生した「大戦」に関する情報が隠蔽され、大西洋や太平洋での往来も途絶えた状態です。タークは、彼の艦船「コールドウォーター号」で北大西洋を漂流し、偶然にも30度線を超えてヨーロッパに足を踏み入れます。

果たして彼を待ち受けていたのは、文明が崩壊したヨーロッパの光景でした。かつての繁栄は失われ、残された人々は野蛮な生活を強いられ、言語ですら変化していました。主人公たちは、イギリスで壊滅的な被害を受けた街並みや、野生の動物に怯えた人々を目の当たりにし、その後、降りかかる冒険の数々に巻き込まれていきます。

ストーリーは、タークがイギリスでヴィクトリーという女性に出会うところから進展します。彼女は英国王家の子孫であり、タークは彼女を守りながら、文明が衰退しきったヨーロッパを巡ります。ドイツでは捕虜になり、黒人国家アビシニアの皇帝に奴隷として扱われ、再び中国に捕らえられた際にはその皇帝と友好関係を結び、アメリカの現状を伝えることになります。

物語のクライマックスでは、タークが結婚式を挙げる日、アメリカから彼を捜索するための隊が到着し、意外な英雄視を受ける展開が待っています。これを機にタークは再び30度線を越え、彼女を守るため新たな冒険に乗り出すのです。

『失われた大陸』は、バローズの作品の中でも未来を舞台にした稀有な小説であり、彼の他の作品と同様に、冒険と探求の要素が織り交ぜられています。本作のテーマには、戦争の悲惨さや失われた文明に対する考察が含まれています。これを通じて、読者はジェファースン・タークの旅を通し、過去と未来、文明と野蛮、そして人間の本質を考察する機会を得ることでしょう。

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