奈良きたまち

奈良きたまち：歴史と文化が息づく古都の北

奈良きたまちエリアは、奈良県奈良市中心部の奈良町に含まれる地域で、古くからの町並みが今も色濃く残るエリアです。明確な境界線はありませんが、概ね大宮通りの北、やすらぎの道の東、東大寺周辺とその西側、京都府との県境より南の地域を指します。

歴史の重層：平城京から現代へ

奈良きたまちの歴史は古く、平城京の外京（げきょう）の東北部に位置していました。現在も、東西に走るかつての一条通・二条通、そしてその中間にあった二条条間路の名残を偲ばせる道路が、当時の面影を残しています。南北に走る東七坊大路は、現在も国道369号として利用されています。

江戸時代から昭和初期にかけての町並みが良好に残っており、「法蓮格子」と呼ばれる独特の様式の町家が多く見られます。また、洋風建築の奈良少年刑務所や、重要文化財に指定されている奈良女子大学記念館など、歴史的建造物も点在しています。南都八景の一つとして知られる佐保川、雲居坂、轟橋、東大寺鐘もこの地域にあり、春日野の鹿の姿を見かけることもあります。

江戸時代には、東大寺の西から北に向かう奈良街道の北の玄関口として栄え、多くの旅籠や商店が軒を連ねていました。京都に通じるこの街道を中心に、町は発展を遂げました。奈良女子大学はかつての奈良奉行所跡地であり、その北側の西笹鉾町は奈良代官所があった場所でもあります。江戸時代には、与力屋敷などが並ぶ官庁街でもありました。

明治時代には、一条通りが、大仏鉄道の駅から東大寺の転害門へ向かう参道として賑わいをみせました。多聞山城は、戦国時代の武将・松永久秀が築城した山城で、近世城郭のモデルとなった四層の天守を備えており、宣教師ルイス・フロイスもその美しさを称賛したと伝えられています。その城は安土城の築城にも影響を与えたと言われています。

1998年には「奈良街道町づくり研究会」が設立され、「喜び多い街」、「何か懐かしい来たことのある街」、「また来たい街」（きたまち）をキャッチフレーズに、地域活性化に取り組んでいます。2004年には奈良市が「奈良まちかど博物館」を認可し、現在13箇所の施設が一般公開されています。2012年には、旧鍋屋交番が改修され、「きたまち案内所」として活用されています。

多くの史跡・名所

奈良きたまちには、多くの史跡・名所が点在しています。

歴史的建造物・寺院:

奈良豆比古神社：県天然記念物のクスノキと、歴史的な道標が残されています。
西福寺：平安時代後期の重要文化財の仏像を所蔵しています。
奈良少年刑務所：明治41年築の洋風レンガ造りの建物です。
般若寺：石造十三重塔や国宝の楼門、コスモスで有名な寺院です。
浄福寺：阿弥陀如来坐像を安置する寺院です。
北山十八間戸：鎌倉時代の僧が造営したと伝わる治療院です。
五劫院：重要文化財の五劫思惟阿弥陀如来坐像が安置されています。
細田家住宅：奈良市最古の農家の一つです。
河瀬家：国の登録有形文化財に指定された町家です。
空海寺：正倉院の北にある寺院で、穴地蔵として知られています。
知足院：東大寺塔頭の一つで、天然記念物のヤエザクラがあります。
正倉院：聖武天皇の遺品などを収蔵する宮内庁管理の施設です。
東大寺講堂遺構：講堂の礎石と、周辺を自由に歩く鹿が見られます。
東大寺転害門：東大寺の遺構の中でも最古のものです。
奈良女子大学記念館：旧本館と守衛室は重要文化財です。
旧鍋屋交番きたまち案内所：昭和3年建築の交番を改修した観光案内所です。
称名寺：茶道の祖・珠光が修行した寺として知られています。


その他:

夕日地蔵：会津八一の歌碑があります。
見返り地蔵：五劫院の中にある地蔵です。
北向地蔵：全国的に珍しい北向きの地蔵です。
大仏池：大仏造営時の水銀処理の伝承が残っています。
雲居坂・轟橋：南都八景の一つとして知られる坂道と橋の跡です。
子規の庭：俳人・正岡子規が滞在した旅館の跡地です。
多聞山城跡：近世城郭のモデルとなった山城の跡です。
聖武天皇・光明皇后陵：御蓋山を望むことができます。

アクセス

近鉄奈良駅から徒歩10～15分。または、奈良交通バス奈良阪・青山住宅行き「今小路」「手貝町」下車。

周辺情報

南都八景
奈良公園
ならまち
平城宮跡
NHK奈良放送局

きたまちエリアは、歴史と自然、そして現代が調和した、魅力あふれる場所です。静かな散策から歴史探訪まで、様々な楽しみ方ができるエリアと言えるでしょう。

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