五劫院

五劫院：時を超える阿弥陀如来の安らぎ

奈良県奈良市北御門町に佇む五劫院は、古都の静寂をたたえた華厳宗の寺院です。東大寺の末寺として、悠久の歴史と伝統を今に伝えています。山号を思惟山と称し、その名の通り、静かに瞑想にふけるのにふさわしい、落ち着いた雰囲気に包まれています。

五劫院の歴史は、平安時代へと遡ります。開基は、東大寺再建の中心人物として知られる重源です。中国より将来したと伝えられる、本尊の五劫思惟阿弥陀如来坐像を安置したことが、この寺院の始まりとされています。

この阿弥陀如来坐像は、鎌倉時代の作で、国の重要文化財に指定されている貴重な仏像です。他の阿弥陀如来像とは一線を画す、長く伸びた螺髪（らほつ）が特徴的です。その独特の造形は、見る者の心を深く捉え、静謐な空間の中で、時の流れを忘れさせてくれるようです。通常は非公開ですが、毎年8月初旬には開扉され、その神秘的な姿を拝むことができます。

寺院へのアクセスは、近鉄奈良駅から青山住宅行きのバスを利用し、「今在家」停留所で下車後、徒歩3分と便利です。東大寺正倉院からも徒歩10分と、奈良観光の際に立ち寄りやすい立地にあります。

五劫院は、予約制での拝観となっています。事前に予約することで、ゆっくりと境内を散策し、歴史と文化に浸ることができます。静寂の中で、阿弥陀如来の慈悲に満ちた姿を拝み、穏やかな時間を過ごすことができるでしょう。

五劫院は、単なる寺院を超えた、歴史と信仰の深淵に触れることができる場所です。重源ゆかりの寺院、そして鎌倉時代の貴重な仏像を目の当たりにすることで、古都奈良の豊かな文化遺産を肌で感じることができます。

周辺には、奈良きたまちと呼ばれる歴史地区が広がり、古都の情緒あふれる散策を楽しむことができます。五劫院を訪れた際には、ぜひ周辺の史跡や名所も巡り、奈良の魅力を存分にご堪能ください。

参考文献

岩田茂樹「奈良・五劫院の五劫思惟阿弥陀如来坐像」

関連リンク

五劫院/巡る奈良（奈良県観光局「巡る奈良」の紹介ページ）

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