奏楽者たち (カラヴァッジョ)

概要

『奏楽者たち』（そうがくしゃたち、伊: Concerto di giovani、英: The Musicians）は、イタリアのバロック期を代表する巨匠ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ（1571年 - 1610年）が1595年頃に手がけた油彩作品です。1952年よりニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されており、1983年には大規模な修復が行われました。この絵画は、カラヴァッジョがフランチェスコ・マリア・デル・モンテ枢機卿の邸宅に滞在していた時期に、特に枢機卿のために描かれた初期の作品の一つと考えられています。

カラヴァッジョの伝記作家であるジョヴァンニ・バリオーネは、この作品について「自然から巧みに引き出された音楽を奏でる枢機卿の周りの若者たちと、リュートを奏でる若者を描いた」と述べています。この「リュートを奏でる若者」は、カラヴァッジョの別の作品『リュート奏者』（エルミタージュ美術館所蔵）と関連があり、対作品と見なされることもあります。

詳細な内容

絵画には、古典的な衣装をまとった4人の少年が描かれています。そのうち3人は、さまざまな楽器を演奏したり歌ったりしており、残りの1人はキューピッドに扮してブドウの房に手を伸ばしています。この構成は、食べ物が生命の糧であるように、音楽を愛の糧として関連付ける寓意と解釈できます。

カラヴァッジョは、2人の人物の習作をもとにこの絵画を構成したようです。中央でリュートを持つ少年は、画家の友人であるマリオ・ミンニーティと同一視されており、その隣で鑑賞者の方を向いている少年は、おそらくカラヴァッジョ自身の自画像であると考えられています。キューピッドの姿の少年は、数年前に制作された『果物の皮を剥く少年』や『アッシジの聖フランチェスコの法悦』に登場する天使と非常によく似ています。

描かれている楽譜は、少年たちが愛をテーマにしたマドリガーレを練習していることを示唆しており、中心人物であるリュート奏者の目は涙で潤んでいます。これは、歌が必ずしも愛の喜びだけでなく、悲しみも表現していることを示唆しているでしょう。前景に置かれたヴァイオリンは、5人目の人物の存在を暗示しており、鑑賞者を絵画の世界に引き込む役割を果たしています。

当時の音楽シーンは、教会が音楽の復興を支援し、デル・モンテ枢機卿のような進歩的な高位聖職者が新しい様式や形式を試していた時代でした。しかし、本作は宗教的なテーマよりも世俗的な側面が強く、ヴェネツィアの伝統を受け継ぎ、カラヴァッジョよりも前の時代にティツィアーノが描いた『田園の奏楽』のような「コンサート」絵画の伝統を彷彿とさせます。

構図と制作

本作は、カラヴァッジョにとって最も野心的で複雑な構図の作品の一つです。しかし、画家は4人の人物を別々に描くのに苦労したようで、彼らは互いに関連性が薄く、全体的にぎこちなさを感じさせます。楽譜のテノールとアルトの部分は判別できますが、絵画の状態は悪く、楽譜は過去の修復によって大きく損傷しています。それでも、絵具の剥落にもかかわらず、作品の独創性は失われていません。

まとめ

『奏楽者たち』は、カラヴァッジョの初期の作品でありながら、その才能と革新性を十分に示しています。音楽と愛の寓意を組み合わせたこの作品は、バロック絵画の重要な例として、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

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