奥殿藩

奥殿藩の概要

奥殿藩（おくとのはん）は、三河国の額田郡に位置し、愛知県岡崎市奥殿町に藩庁を置いた藩です。領地は三河国のほか、信濃国佐久郡にも広がり、特に信濃国の領土が広かったことが特徴です。藩庁は何度か移動しており、立藩当初は加茂郡の大給陣屋を、幕末には信濃国の龍岡城に設置されました。このため、大給藩や田野口藩などとも同様の藩として扱われることが多く、情報が統合されて記述されています。

藩の石高は、立藩から幕末にかけて1万6000石で固定され、松平家の支配が続きました。

藩史の背景

大給藩の成立

大給藩は、松平親忠の次男である松平乗元から始まる松平家が築いた藩です。この家系は代々松平宗家に仕え、特に第5代当主の松平真乗が徳川秀忠に仕え、大坂の陣の功績により、三河加茂郡大給に陣屋を構えました。松平真次の子、松平乗次が更に知行を加増され、1万6000石の大名となりました。

1704年、松平乗真の時代に大給藩は、領地を信濃国佐久郡田野口に移転し、ここに新しい藩庁を設けました。また、乗真は藩庁を奥殿に移転することを決定しました。

奥殿藩の時代

奥殿に移転した後の享保年間には、自然災害や飢饉によって年貢が半減するなどの危機が発生しましたが、第7代藩主の松平乗利は厳しい状況の中でも有能な政治を行いました。彼は良政を敷いたことで一般から高い評価を受け、生活困難な人々への救済策を講じるなど、政治に対する熱心な取り組みを行いました。また、教育にも力を入れ、藩校や演武場を設立しました。

乗利の後を継いだ松平乗謨が藩主となり、幕末を迎えます。乗謨は恐れ多い学問熱心で、特に軍事において積極的に新しい制度を導入し、藩庁の移転を強く望んでいました。1863年には信濃国に陣屋を移転する許可を得ましたが、この動きに対し三河の領民から反対の嘆願書も出されるなど、騒動が起こることもありました。

田野口藩と龍岡藩

信濃国への移転後、藩は田野口藩と呼ばれ、乗謨は星形要塞を築く計画を立て、1863年から工事を開始しました。田野口陣屋（龍岡城）は日本で数少ない星形要塞として知られ、1867年には御殿が完成しましたが、城郭は未完成のまま明治維新を迎えることとなりました。

藩政ではフランス式軍制をいち早く導入し、陣屋内は常に訓練を行う場として使用されました。乗謨は幕末の動乱の中でも新政府に参加し、北越戦争で戦死した藩士の墓が今も残っています。

廃藩とその後

藩の名称は1868年に龍岡藩に改称され、明治4年には財政破綻により廃藩となりました。その後、松平乗謨は大給恒と改名し、明治政府の下で活躍することになります。

歴代藩主

奥殿藩の歴代藩主は松平家の血筋によるもので、主に譜代として支配が続きました。藩主の多くは大名に相応しい地位を得ており、特に松平乗謨の功績が強調されています。

奥殿藩の歴史は、地方の一藩の姿を通して、時代の変遷とともに日本の政治的な状況を浮き彫りにします。

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