奥田央

奥田 央（おくだ ひろし）

奥田央は、1947年生まれの日本の歴史学者であり、特に20世紀前半のロシア経済史と農民史を専門としています。東京大学経済学部を卒業後、長年にわたり研究と教育に携わり、東京大学名誉教授の地位にあります。

研究分野

奥田氏の研究は、1920年代から1930年代のソビエト連邦における経済政策、特に農業政策に焦点を当てています。この時代は、社会主義体制の確立と大規模な社会変革が同時進行した時期であり、その変革が農村社会に与えた影響を詳細に分析しています。

具体的には、以下のようなテーマが研究の中心となっています。

ソビエト経済政策史: ソ連初期の経済政策がどのように立案・実行され、それが経済や社会にどのような影響を与えたのかを、市場メカニズムの観点から分析しています。
コルホーズの成立過程: 集団農場であるコルホーズがどのようにして形成されたのか、その過程で伝統的な農村共同体がどのように解体されていったのかを、歴史的資料に基づいて考察しています。
スターリン統治下の農村: スターリン体制下における農村の変革に焦点を当て、政治的・経済的な力が農村社会に与えた影響を多角的に分析しています。

受賞歴

1979年、奥田氏は著書『ソヴェト経済政策史』によって、日経・経済図書文化賞を受賞しました。この受賞は、彼の研究が学術的に高く評価されていることを示すものです。

著書

奥田氏は、数多くの著作を発表しており、その多くはロシア経済史・農民史研究において重要な文献となっています。以下に主な著書を挙げます。

単著

『ソヴェト経済政策史――市場と営業』（東京大学出版会、1979年）
『コルホーズの成立過程――ロシアにおける共同体の終焉』（岩波書店、1990年）
『ヴォルガの革命――スターリン統治下の農村』（東京大学出版会、1996年）

編著

『20世紀ロシア農民史』（社会評論社, 2006年）
ХХ век и сельская Россия. CIRJE-R-2. Токио, 2005.
ХХ век и сельская Россия. Выпуск 2. CIRJE-R-9. Токио, 2012

共編著

（廣田功・大沢真理）『転換期の国家・資本・労働――両大戦間の比較史的研究』（東京大学出版会、1988年）

訳書

奥田氏は、ロシア語の文献を日本語に翻訳し、日本の研究者や学生がロシア経済史・農民史を学ぶ上で貢献しました。主な訳書は以下の通りです。

V・P・ダニーロフ『ロシアにおける共同体と集団化』（御茶の水書房、1977年）
R・W・デイヴィス『社会主義的攻勢――ソヴェト農業集団化・1929-1930』（御茶の水書房、1981年）
A・ノーヴ『ソ連経済史』（岩波書店、1982年）
Ｍ・シートン＝ワトソン『文学作品にみるソヴェト人の息吹』（朝日新聞社、1988年）

研究の意義

奥田氏の研究は、ソビエト連邦における社会変革の実態を明らかにするだけでなく、現代社会における社会主義経済の歴史的意義を考える上で重要な示唆を与えています。特に、農村社会の変容過程を詳細に分析することで、社会主義体制が社会構造や人々の生活にどのような影響を与えたのかを理解する上で不可欠な知識を提供しています。

奥田氏の研究は、歴史研究だけでなく、社会学、経済学、政治学など、幅広い分野の研究者にとって貴重な資料となっています。その業績は、今後も多くの研究者に参照され、新たな研究の出発点となるでしょう。

奥田氏の深い学識と分析力は、20世紀のロシア社会を理解する上で欠かせないものであり、その研究はこれからも歴史学の発展に貢献していくことでしょう。

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