奥田智重子

奥田智重子（おくだ ちえこ）

奥田智重子は、1915年6月23日に生まれ、2006年3月6日に逝去した日本の声楽家（ソプラノ）であり、音楽教育者です。本名は久本智重子といいます。彼女は、その生涯を通じて、声楽家として、また教育者として、日本の音楽界に大きな足跡を残しました。

経歴

千葉県千葉市出身の奥田は、1937年に東京音楽学校本科を卒業、1939年には同校研究科を修了しました。戦時中には、『此の決意』などの軍歌録音にも参加しています。1949年に東京でリサイタルデビューを果たし、1953年からはドイツのフライブルク音楽大学に留学。1955年に同大学を卒業後、1958年までマイスターコースで学び、マリア・フォン・ヴィンターフェルトに師事しました。

声楽家としての活動

奥田は、歌曲、オペラ、宗教音楽など幅広いジャンルで活動しましたが、特にドイツリートを得意としました。夫であるピアニストの久本成夫や、水谷達夫のピアノ伴奏で、ヨーロッパや日本各地で演奏活動を展開。1973年には、虎の門交響楽団とシューベルトの『セレナーデ 水の上にて歌える』を共演しました。

教育者としての貢献

演奏活動の傍ら、奥田は後進の育成にも尽力しました。1964年から1966年まで国立音楽大学の講師を、1966年から1981年まで同大学の教授を務めました。また、ドイツ歌曲研究会を主宰し、歌曲発表会「ユングリンデン」を主催するなど、教育者としても多大な貢献をしました。

死去とその後

2006年3月6日、急性心不全により90歳で逝去しましたが、彼女の音楽への情熱は、門下生たちによって受け継がれています。門下生による“CHIEKO-KAI”が組織され、生誕100周年を記念したコンサートが開催されました。そのコンサートには、多くの門下生が出演し、奥田の音楽を偲びました。

奥田智重子記念ドイツリート部門

奥田の功績を称え、P.I.A.Japan音楽コンクールのドイツリート部門は、「奥田智重子記念ドイツリート部門」と名付けられました。この部門では、第1位から第3位、金賞、銀賞、奥田智重子賞、伴奏者賞が設けられ、多くの声楽家たちがその栄誉を目指しています。

家族

夫は国立音楽大学の元教授でピアニストの久本成夫です。長男は映画監督の土橋亨。また、義理の甥（姪の夫）には、著名な作詞家、放送作家の永六輔がいます。

著書と受賞歴

奥田は、ドイツ留学の手引書として『フライブルクに留学して・声楽家 奥田智重子』を著しました。また、1960年に毎日音楽賞、1961年にはドイツ政府からアイヒェンドルフ没後100年記念メダル勲章を授与されています。

録音

奥田は、『富士山見たら/平城山』などのレコードをリリースしており、その歌声は後世にまで残されています。また、オムニバスアルバム『日本洋学史－声楽 女声篇《SP時代の名演奏家》』にも「平城山」が収録されています。

奥田智重子は、その卓越した歌唱力と、教育者としての情熱を通じて、日本の音楽界に多大な影響を与えた人物です。

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