水谷達夫

水谷達夫：卓越したピアニスト、教育者としての生涯

水谷達夫（1911年10月2日 - 1998年8月27日）は、日本の音楽界に多大な貢献をしたピアニスト、そして教育者です。音楽家の父、水谷志奇男の影響を受け、4歳からピアノを始めました。東京音楽学校（現在の東京藝術大学）でピアノを学び、卒業後は同校の研究科に進みました。福井直俊、田中規矩士、パウル・ヴァインガルテン、レオ・シロタ、レオニード・クロイツァーといった著名な指導者に師事し、特にレオ・シロタ門下では、永井進、豊増昇とともに「三羽烏」と称されました。

1939年、東京音楽学校の助[[教授]]に就任し、1949年には東京藝術大学の教授に昇進。1954年から1955年にはシュトゥットガルト音楽大学でアルフレッド・クロイッツに師事し、ドイツ古典音楽の研究に励みました。1979年には東京藝術大学名誉[[教授]]となりました。

水谷はアンサンブルを好み、声楽家や他の楽器奏者との共演を数多く行いました。特に、木下保との共演は特筆に値し、木下の独唱会で伴奏を務めただけでなく、信時潔の歌曲『沙羅』全曲初演の伴奏も担当しました。この演奏はレコードとして発売され、文部大臣賞を受賞しています。中山悌一との労音をはじめ、奥田智重子、戸田敏子、浅野千鶴子といった声楽家、江藤俊哉（ヴァイオリン）、吉田雅夫（フルート）など様々な演奏家と共演しました。

教育者としても、東京藝術大学をはじめ、国立音楽大学、桐朋学園大学など数多くの大学で教鞭を執り、後進の育成に力を注ぎました。1963年にはNHK-TV『ピアノのおけいこ』で講師を務め、娘の水谷百合子とともにお茶の間にピアノ教育を普及させました。文部省教科書編集委員や各種コンクールの審査員も歴任しました。また、東京藝術大学大学院修士課程の設置準備に深く関わり、現在の博士課程の基礎を築きました。水谷の教えを受けた門下生は非常に多く、鬼頭恭一、伊藤栄一、小林秀雄、三石精一、久本成夫、小田野宏之、坂本博士、村田由美、木村由紀子、桑原由喜枝、森木洋子、涌井曄子、滝澤三枝子、横田伸子、小坂恵利乃、植田伸子、斎藤冨佐子、淡海悟郎、荻野治子、蔵田裕行、田中敦子、大野久美子、奥村晃博、佐藤英臣、八木宏子、岡﨑實俊、石川百合子、安井耕一、佐藤鈴子、原佳大、井上淳司、増田宏昭、中川さとみ、水谷直子など、日本の音楽界を担う多くの人材を輩出しました。

1994年には勲三等瑞宝章を受章し、1998年8月27日に86歳で逝去。没後、正四位に叙せられました。1999年からは、水谷の功績を記念し、P.I.A.Japan音楽コンクールで、最も優れた伴奏者に『水谷達夫賞』が贈られています。

水谷の演奏活動と教育活動は、日本の音楽文化の発展に大きな影響を与えました。彼の残した音楽と、彼が育てた多くの音楽家たちは、これからも日本の音楽界を豊かに彩り続けるでしょう。

主なディスコグラフィーには、木下保との共演による「君が姿」「小夜歌」「楽に寄す」「海辺にて」「蓮花」などの歌曲伴奏が残されています。また、木下保の芸術を集めたCDにも水谷の演奏が収録されています。これらの音源は、水谷の卓越したピアノ演奏と、音楽への情熱を後世に伝える貴重な資料となっています。

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