奥直人

奥直人：薬学研究の第一人者

奥直人氏は、日本の薬学者であり、腫瘍生化学、薬物送達学、核医学を専門としています。1952年9月に東京都世田谷区で生まれました。東京大学薬学部を卒業後、同大学院で薬学博士号を取得。その後、ノースウェスタン大学での研究員を経て、摂南大学、静岡県立大学で教鞭を執りました。

研究者としての道のり

奥氏は、東京大学薬学部での研究員時代を経て、アメリカのノースウェスタン大学で博士研究員、助手として研究活動に従事しました。帰国後は、摂南大学で講師、助教授を務め、1991年に静岡県立大学に移籍しました。静岡県立大学では薬学部教授として、医薬生命化学分野を中心に講義を担当し、大学院では薬学研究科の教授も兼務しました。2012年には、大学院の再編に伴い、薬学研究院の教授も兼務し、薬食生命科学総合学府で医薬生命化学教室を受け持ちました。

奥氏は、学内での役職も数多く歴任しており、実験動物センター運営委員会委員長、アイソトープセンター運営委員会委員長、放射線安全委員会委員長、放射線取扱主任、教務委員会委員長、核燃料物質管理委員会委員長、国際交流委員会委員長などを務めました。また、学長補佐や評議員も歴任し、大学運営にも深く関わってきました。2005年には大学院薬学研究科長、2007年には薬学部長に就任し、2013年には副学長を務めました。

2018年に静岡県立大学を退職し、名誉教授の称号を授与されました。その後、帝京大学薬学部の教授に就任し、2019年からは学部長も兼務しています。

専門分野と研究業績

奥氏の専門は、腫瘍生化学、薬物送達学、核医学といった分野です。特に、リポソームを用いたドラッグデリバリーシステムの研究で知られています。リポソームに薬剤を封入することで、副作用を抑制し、標的部位への効率的な薬剤送達を可能にする研究に取り組んでいます。脳梗塞に対するドラッグデリバリーシステムの応用研究では、虚血部位の障害抑制や運動機能維持への効果も明らかにしました。

奥氏の研究は国内外で高く評価されており、1995年に日本薬学会奨励賞、2016年に日本薬学会賞を受賞しています。日本薬学会賞は、薬学の基礎および応用に関し、世界の学術進歩に著しく貢献した研究者に贈られる最高位の賞です。また、2012年には日本DDS学会永井賞、2015年には静岡県立大学学長表彰、タケル・アヤ・ヒグチ記念賞を受賞。2019年には、リポソーム研究の功績が認められ、国際リポソーム研究会議でバンガム賞を受賞しました。バンガム賞は、日本人として初、アジア全体でも初の受賞となりました。

学会活動と社会貢献

奥氏は、日本薬学会、日本生化学会、日本薬剤学会、日本DDS学会など、多くの学術団体に所属し、役員も歴任しました。日本薬学会では、副会頭や各種委員会の委員長を務め、2017年から2018年には会頭に就任しました。これらの活動を通じて、薬学研究の発展に大きく貢献してきました。

主な著書と論文

奥氏は、研究活動の傍ら、多くの著書や論文を発表しています。単著としては、『リポソームの作成と実験法』(1994)があります。また、編纂としては、『リポソーム応用の新展開――人工細胞の開発に向けて』(2005)があります。

門下生

奥氏の門下からは、浅井知浩氏、南彰氏、小出裕之氏などの研究者が輩出されています。

略歴

1952年 - 誕生
1975年 - 東京大学薬学部卒業
1980年 - 東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了
1980年 - 東京大学薬学部研究員
1981年 - ノースウェスタン大学博士研究員
1982年 - ノースウェスタン大学助手
1983年 - 摂南大学薬学部講師
1987年 - 摂南大学薬学部助教授
1991年 - 静岡県立大学薬学部助教授
1998年 - 静岡県立大学薬学部教授、静岡県立大学大学院薬学研究科教授、静岡県立大学実験動物センター運営委員会委員長、静岡県立大学アイソトープセンター運営委員会委員長、静岡県立大学放射線安全委員会委員長
1999年 - 静岡県立大学学長補佐
2000年 - 静岡県立大学放射線取扱主任
2002年 - 静岡県立大学学長補佐、静岡県立大学評議員、静岡県立大学教務委員会委員長
2005年 - 静岡県立大学核燃料物質管理委員会委員長、静岡県立大学核燃料物質管理責任者、静岡県立大学大学院薬学研究科研究科長
2007年 - 静岡県立大学薬学部学部長
2012年 - 静岡県立大学大学院薬学研究院教授、静岡県立大学学長補佐、静岡県立大学国際交流委員会委員長
2013年 - 静岡県立大学副学長
2014年 - 静岡県公立大学法人理事
2015年 - 静岡県立大学大学院薬学研究院研究院長、静岡県立大学大学院薬食生命科学総合学府学府長
2017年 - 日本薬学会会頭
2018年 - 静岡県立大学退職、帝京大学薬学部教授、静岡県立大学名誉教授
2019年 - 帝京大学薬学部学部長

受賞歴

1995年 - 日本薬学会奨励賞
2012年 - 日本DDS学会永井賞
2015年 - 静岡県立大学学長表彰
2015年 - タケル・アヤ・ヒグチ記念賞
2016年 - 日本薬学会賞
2019年 - バンガム賞

奥直人氏は、薬学研究の発展に多大な貢献を果たした、まさに日本の薬学界を代表する人物と言えるでしょう。

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