奥野谷浜駅

奥野谷浜駅（おくのやはまえき）

概要

奥野谷浜駅は、茨城県神栖市東和田に位置する、鹿島臨海鉄道鹿島臨港線の重要な貨物駅です。広大な鹿島臨海工業地帯の中に設けられたこの駅は、地域の産業活動を支える物流拠点の一つとして開設されました。

歴史

奥野谷浜駅は、1970年（昭和45年）7月21日に貨物駅として営業を開始しました。開業当初から、臨海工業地帯の工場群で生産される製品や原材料の輸送を担う中心的な役割を果たすことになります。特に注目される歴史としては、1978年（昭和53年）5月25日から開始された成田国際空港（当時の新東京国際空港）向けのジェット燃料輸送が挙げられます。これは鹿島港にタンカーで搬入されたジェット燃料を、奥野谷浜駅から貨物列車で空港近くの基地まで輸送するという重要な物流ルートでした。しかし、このジェット燃料輸送は、その開始から約5年後の1983年（昭和58年）8月6日に終了しています。

その後も多種多様な貨物輸送が継続されましたが、企業の事業再編や物流網の変化に伴い、一部の貨物取り扱いが終了しました。例えば、三菱化学（現：三菱ケミカル）の専用線を利用した液化酸化エチレンの輸送が、2001年（平成13年）1月14日に塩浜駅（神奈川県川崎市）向けに開始されましたが、この輸送も2011年（平成23年）3月31日をもって終了しました。また、武田薬品工業鹿島工場へ向けた濃硝酸の輸送も、2008年（平成20年）3月15日限りでその役目を終えています。

駅構造と機能

奥野谷浜駅は地上に設けられた貨物駅であり、主に専用線に発着するコンテナ貨物および車扱貨物の取り扱いを行っています。現在、この駅から直接専用線が分岐している企業は、三菱ケミカル鹿島事業所とENEOSマテリアル鹿島工場（旧称：JSR鹿島工場）です。

駅構内の線路は、これらの専用線への分岐点からさらに先に延びていますが、その先には簡易な車止めが設置されており、そこが実質的な軌道の終端部となっています。現在の定期的な貨物輸送は限定的で、神栖駅との間でENEOSマテリアル鹿島工場（旧称：JSR）向けのコンテナ列車が運行されています。この列車は平日午前中に不定期での運行となっています。

かつて接続していた専用線

奥野谷浜駅には、過去には現在よりも多くの企業の工場へ繋がる専用線が分岐していました。これには、信越化学工業鹿島工場、鹿島石油鹿島製油所、そして武田薬品工業鹿島工場が含まれます。

武田薬品工業の専用線では、富山県にある速星駅からタンク車によって濃硝酸が輸送されていました。しかし、この輸送は2008年3月をもって取り扱いを終了しています。信越化学工業の専用線では、ポリ塩化ビニルなどの化学製品が、鹿島石油の専用線では主に石油製品などが扱われていたことがありました。

特に、三菱化学の専用線は液化酸化エチレンの発送拠点として機能しており、この特殊な貨物を塩浜駅へ輸送するための荷役設備が設置されていました。この輸送は2011年3月に終了しましたが、関連する積み下ろし施設はその後も比較的長く残存しており、2020年頃まで航空写真などでその姿が確認できていました。しかし、遅くとも2022年頃までにはこれらの設備は解体され、撤去されています。

駅周辺

奥野谷浜駅の周囲には、鹿島臨海工業地帯の中核をなす多くの巨大な工場や事業所が集積しています。主要なものとしては、現在専用線が接続しているENEOSマテリアル（旧JSR）鹿島工場のほか、AGC鹿島工場、三井化学鹿島工場、三菱ケミカル茨城事業所といった日本を代表する化学・素材メーカーの拠点が林立しています。また、鹿島北共同発電所や、かつて専用線が分岐していた信越化学工業鹿島工場、鹿島石油鹿島製油所なども近隣に位置しており、日本の重化学工業を支える心臓部ともいえるエリアに位置しています。

隣接駅

鹿島臨海鉄道 鹿島臨港線における奥野谷浜駅の隣接駅は以下の通りです。

神栖駅 - 知手駅 - 奥野谷浜駅

（知手駅は貨物駅であり、旅客営業は行われていません。）

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