車扱貨物

車扱貨物：日本の[[鉄道]]貨物輸送の歴史と現状

車扱貨物とは、日本貨物[[鉄道]]（JR貨物）およびその前身である日本国有[[鉄道]]（国鉄）、臨海鉄道などが行う鉄道貨物輸送の一形態です。1両の貨車を単位として貨物を輸送する方式で、JR貨物や国鉄が保有する貨車、あるいは私有貨車が使用されます。鉄道車両そのものを輸送する甲種鉄道車両輸送も、車扱貨物に含まれます。

車扱貨物は、大きく分けて「専用線発送車扱貨物」と「一般車扱貨物」の2種類に分類されます。専用線発送車扱貨物は、工場や倉庫などに敷設された専用線で荷役を行う方式です。石油、化学薬品、セメント、石炭などの輸送は、この方法が主流でした。農産物や海産物に関しても、駅に隣接する倉庫や漁港などの専用線を使用して荷役が行われ、一定量の貨物が集まると鉄道事業者に引き渡される仕組みでした。

一方、一般車扱貨物は、駅に設置された貨物ホームで貨物を積み込む方式です。有蓋車などを使用して、様々な貨物を輸送していました。

車扱貨物の歴史と衰退

かつて、車扱貨物は日本の[[鉄道]]貨物輸送の中核を担っていました。1980年代初頭までは、多くの駅や操車場に貨物ホームが設置され、工場や港湾倉庫などへ続く専用線が張り巡らされていました。しかし、トラックへの積み替え作業の手間、モータリゼーションの進展、情報化の遅れ、輸送時間の遅延や到着時刻の不確定さ、労働争議など様々な要因が重なり、1970年代後半から鉄道貨物取扱量は減少に転じました。

1984年の国鉄ダイヤ改正では、貨物輸送体系の大幅な見直しが行われ、コンテナ輸送やトラック輸送への移行が進みました。その結果、多くの駅で車扱貨物の取り扱いが廃止され、貨物駅の取扱量も大幅に縮小されました。

それでも、爆発物や危険物などトラック輸送が難しい貨物を取り扱う工場や、道路が未整備な地域では車扱貨物輸送が続けられました。しかし、高速道路などの整備、輸送技術の進歩、流通システムの効率化により、1990年代中頃～2000年代にかけて、多くの車扱貨物輸送が廃止され、トラック輸送やコンテナ輸送に転換していきました。

現代の車扱貨物

2022年現在でも、車扱貨物は完全に消滅したわけではありません。石油、化学薬品、セメント、鉱石など、大量の貨物を一度に輸送する場合や、甲種輸送（鉄道車両の輸送）などに利用されています。これらの輸送の大半は、専用線発送車扱貨物です。

しかし、物流システムの進化、景気の低迷、トラックやコンテナ船の輸送能力の向上、専用線の老朽化に伴う維持費の高騰などにより、車扱貨物の輸送量は減少傾向にあります。近年では、運行本数や輸送量の削減、専用線の廃止、トラック輸送やコンテナ輸送への転換が加速しています。

輸送例

車扱貨物では、様々な種類の貨物が輸送されてきました。具体例としては、以下のものが挙げられます。

製油所から油槽所へのガソリン輸送（タンク車）
セメント工場から包装所へのセメント輸送（タンク車、ホッパ車）
鉱山から製鉄所への石灰石輸送
大物車を用いた変圧器輸送
甲種車両輸送
製紙工場から倉庫への紙輸送（かつては有蓋車、現在はコンテナ車）
* 炭鉱から港への石炭輸送（廃止済み）

かつては「4セ」（セメント、石灰石、石油、石炭）が車扱貨物輸送の主要な品目を占めていましたが、これらの輸送も減少傾向にあります。

輸送量

JR貨物の車扱貨物輸送量は、2006年度は約1,343万トンで、貨物輸送全体の37%を占めていました。しかし、1987年にはコンテナ貨物を上回る75%を占めていたことを考えると、その減少ぶりは顕著です。1998年にはコンテナ貨物の輸送量が車扱貨物を初めて上回り、以降はコンテナ貨物の増加、車扱貨物の減少という傾向が続いています。

主要な輸送品目は石油（63%）であり、その他、鉄道車両（11%）、セメント（7%）、石灰石（6%）、化学薬品（4%）、紙・パルプ（3%）などが続きます。

まとめ

車扱貨物は、日本の[[鉄道]]貨物輸送の歴史において重要な役割を果たしてきましたが、時代の変化とともにその地位は低下しています。今後も、トラックやコンテナ輸送との競争、物流システムの進化、経済状況などの影響を受けながら、その存在感を維持していくことになります。

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