女たちの戦争と平和資料館

女たちの戦争と平和資料館 (wam)

女たちの戦争と平和資料館（おんなたちのせんそうとへいわしりょうかん、Women's Active Museum on war and peace、略称：wam）は、日本の東京都新宿区西早稲田に位置する資料館です。主に旧日本軍による慰安婦制度の実態と、戦争という状況下で女性が直面する暴力の問題に焦点を当て、これらの歴史的真実を記録・記憶し、広く伝えていくことを目的としています。

設立の背景と意義

資料館は、元朝日新聞記者であり、女性の人権問題に深く関わった故・松井やより氏の遺志を受け継ぐ形で誕生しました。アジア各地の被害女性たちが日本の戦争責任を問うために開催された「女性国際戦犯法廷」に携わった人々が中心となり、特定非営利活動法人（NPO法人）「女たちの戦争と平和人権基金」を設立主体として、2005年8月に開館しました。資料館は、自らを「日本ではじめて戦時性暴力に特化した記憶と活動の拠点」と位置づけています。

展示と活動

wamでは、戦時性暴力に関する多様な側面を紹介する展示を行っています。常設展示では、「女性国際戦犯法廷」の概要を伝えるパネルが設置されています。また、企画展示として、アジア各国の元「慰安婦」の方々からの証言や被害に関する資料、日本軍兵士の証言、そして現在も世界の各地で続いている戦時性暴力の現実に関するパネルなどを展示しています。これらの展示内容は、ほぼ年に一度変更されることで、常に新たな視点や情報を提供しています。教育普及活動にも力を入れており、たとえば日本の中学生を対象とした「中学生のための『慰安婦』展」のような取り組みも行われています。

資料館は、展示活動に加え、戦時性暴力問題に関する啓発や責任追及のための様々な活動を展開しています。2008年5月には、日本軍「慰安婦」制度を「国家による組織的な性奴隷制度であった」と定義する書籍『フィールドワーク日本軍「慰安婦」』を出版しました。また、事務局長の渡辺美奈氏らが中心となり、2013年には新日本婦人の会などと連携し、国連などの国際的な場で日本政府に対し慰安婦問題の解決を求める国際連帯を呼びかけました。2014年には、国連自由権規約委員会の日本審査の機会を捉え、事務局長がスイス・ジュネーブでの委員会に参加しています。2015年12月31日には、日本と韓国の間で合意された慰安婦問題に関する合意について、「被害者不在」であるとして両政府に対する強い抗議文を発表しました。2016年8月には、旧日本軍「慰安婦」関連資料のユネスコ「世界の記憶」遺産への登録を目指す運動に関連して、特定の絵画作品について一部で議論が報じられる出来事もありました。

所在地・運営体制

資料館は、東京都新宿区西早稲田2丁目3-18、AVACOビルの2階にあります。公共交通機関でのアクセスは、東京メトロ東西線早稲田駅から徒歩約5分、または高田馬場駅から徒歩約20分です。運営体制については、理事長を東海林路得子氏、館長を西野瑠美子氏、事務局長を渡辺美奈氏が務めています。資料館の内装設計は、建築家集団である象設計集団の富田玲子氏が担当しました。

海外の類似施設

日本国外にも、旧日本軍の慰安婦問題をテーマとした展示を行う施設が存在します。韓国には、ソウル市に「戦争と女性の人権博物館」があり、これは韓国の市民団体によって設立され、日本からの支援も得て2012年に開館しました。台湾の台北市には、2016年に台湾初の慰安婦博物館として「阿マの家 平和と女性人権館」が開館しています。中国では、上海師範大学内に「中国『慰安婦』歴史博物館」が2016年に開館したほか、南京市には元慰安所の建物を活用した「南京利済巷慰安所旧址陳列館」が2015年に開館しており、それぞれ慰安婦問題に関する資料展示や記念碑の設置を行っています。

関連情報

本資料館に関連する文献として、資料館自身が編集・出版した書籍や展示カタログが多数存在します。また、「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクション・センターや女性国際戦犯法廷、アジア女性資料センターといった団体や、故・松井やより氏など、関連する活動や人物も多岐にわたります。資料館の公式サイトやブログでは、最新の活動状況や情報が発信されています。

もう一度検索