女だけの都

映画『女だけの都』の概要

『女だけの都』（おんなだけのみやこ）は、1935年に公開されたフランス映画で、監督はジャック・フェデー、脚本はシャルル・スパークが手掛けました。この作品は、17世紀初頭のフランドル（現在のベルギー）を舞台に、女性たちの知恵と機転を描いた艶笑的な風刺物語です。原題の「La Kermesse héroïque」は「英雄的な祭り」という意味を持ち、邦題は輸入元の東和商事が公募によって決定されました。

あらすじ

物語は1616年のフランドルの小さな町から始まります。この町では、年に一度の謝肉祭の準備に大忙しです。町長の妻であるコルネリアは、祭りの支度に加え、末っ子の面倒や長女の恋を見守る役割を担っています。しかし、平穏な日常が突然揺らぐ事態が訪れます。騎馬の伝令が町役場に急報を届け、「今夜スペインのオリバーレス公とその軍がこの町に宿泊する」と告げます。この知らせに驚いた町の有力者たちは、町長が急死したと偽装することで公一行を遠ざけようと画策します。

しかし、コルネリアは臆さず、町の女性たちを広場に呼び集めて、町を守るために戦う決意を固めるよう演説をします。スペイン軍の一行が整然と町に到着し、コルネリアは喪服をまとった女性たちを伴い、外で公を出迎えます。公は町長の急死に哀悼の意を表し、軍楽を控えめにして入城します。コルネリアは将校たちの宿を割り当てる一方で、町長の存在を巧みに利用し、公の弔問を成り立たせます。

コルネリアの機転によって、スペイン軍の兵士たちは町の酒場で飲み明かし、女性たちと楽しむことに。町は意外にも賑わいを見せ、祭りの雰囲気が漂います。コルネリアは公に娘と彼女の恋人を紹介し、酒場が盛り上がる中で、町長の運命を左右する出来事が芽生えていきます。

スタッフとキャスト

この映画の制作には、数名の才能あるスタッフが関与しています。監督のジャック・フェデーはフランス映画界で高い評価を受けており、脚本家のシャルル・スパークも同様に著名です。また、台詞を担当したベルナール・ジマー、助監督のマルセル・カルネ、美術のラザール・メールソン、撮影を手掛けたハリー・ストラドリングなどが作品を支えました。音楽はルイ・ベッツが担当し、映像に彩りを添えています。

主要なキャストには、コルネリア役としてフランソワーズ・ロゼー、町長役のアンドレ・アレルム、オリバーレス公役のジャン・ミュラ、従軍司祭のルイ・ジューヴェ、町長の娘役のミシュリーヌ・シェイレルなど、実力派俳優が名を連ねています。

受賞歴

『女だけの都』は公開後、多くの賞を受賞しました。1935年にはフランス・シネマ大賞を受賞し、1936年にはヴェネツィア国際映画祭で監督賞を獲得しました。また、ニューヨーク批評家協会外国映画賞やキネマ旬報外国映画ベストテン第1位など、国際的に評価されています。

ブランディングと問題提起

本作は、父たちを臆病者に、母たちをふしだら者として描いたことから、ベルギーのフランドル地方で上映反対運動が起こるなど、物議を醸しました。さらに1939年にはナチス・ドイツによる上映禁止命令が出され、翌年にはベルギーが侵略を受けるという歴史的な背景も抱えています。

このように『女だけの都』は、単なる娯楽映画ではなく、当時の社会状況や女性の地位に対する思考を促す作品としての意味を持っています。現在も多くの人々に観られ、語り継がれる名作として位置づけられています。

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