女性ジャーナリストレイプ事件

女性ジャーナリストレイプ事件の概要

この事件は、2015年にフリージャーナリストの伊藤詩織氏（当時26歳）が、当時TBSテレビ報道局記者であった山口敬之氏（当時48歳）から準強姦の被害を受けたと訴えた事件です。この事件は刑事、民事の両面で法廷闘争となり、社会的な注目を集めました。

司法判断の概要

刑事事件

伊藤氏が警視庁に提出した被害届は受理され、警察は捜査を開始しました。2015年8月には山口氏が書類送検されましたが、東京地方検察庁は2016年7月22日に「嫌疑不十分」として不起訴処分としました。伊藤氏はこれを不服として検察審査会に審査を申し立てましたが、2017年9月に「不起訴相当」と議決され、刑事手続きは終結しました。

刑事事件での不起訴処分を受けて、伊藤氏は2017年9月28日に山口氏に対し、1100万円の損害賠償を求める民事訴訟を東京地方裁判所に提起しました。2019年12月18日、東京地裁は「同意のない性行為」を認め、山口氏に330万円の損害賠償金の支払いを命じました。この判決は、2022年1月25日に東京高等裁判所でも支持され、332万円の賠償金支払いを命じました。さらに、2022年7月8日、最高裁判所が山口氏の上告を退けたことで、二審判決が確定し、民事訴訟も終結しました。

事件の経過

背景

ジャーナリズムを学ぶためニューヨークに留学していた伊藤氏は、2013年秋頃にTBSワシントン支局長の山口氏と出会いました。伊藤氏は山口氏のアドバイスを受けながら活動していましたが、生活が困難になったため一時帰国しました。その後、ロイター社の東京支部でインターンをしていたものの、長編映像制作を希望していたためフリージャーナリストに転身しました。2015年3月、伊藤氏はニューヨークでの再就職を検討し、山口氏に相談を持ちかけました。その直後に山口氏は文春の記事の件で一時帰国することになり、事件当日である2015年4月3日、二人は恵比寿で飲食を共にしました。

刑事事件の経過

伊藤氏は4月9日に警察に被害を訴え、4月30日に被害届が受理されました。捜査の結果、山口氏の自宅が家宅捜索されたり、ポリグラフ検査を受けるなどの過程がありました。しかし、2016年7月に嫌疑不十分で不起訴処分となりました。伊藤氏が申し立てた検察審査会でも不起訴相当とされ、刑事事件は終結しました。

民事事件の経過

不起訴処分確定後、伊藤氏は記者会見で事件を公表し、2017年9月28日に損害賠償を求めて民事訴訟を提起しました。告発本『Blackbox』を出版し、外国特派員協会で会見を行いました。一方、山口氏も伊藤氏の主張を否定し、名誉毀損で反訴しました。2019年12月18日、東京地裁は伊藤氏の請求を認め、山口氏に賠償を命じましたが、山口氏の反訴は棄却されました。その後、山口氏は控訴しましたが、2022年1月25日、東京高裁も一審判決を追認し、賠償金を増額しました。最高裁で山口氏の上告が棄却され、民事訴訟は終結しました。

伊藤氏が関連して起こした訴訟

伊藤氏は、SNS上での誹謗中傷に対して複数の投稿者を提訴しています。

はすみとしこ氏らに対する訴訟：漫画家のはすみとしこ氏による名誉毀損ツイートを巡る訴訟で、一部賠償が認められました。
杉田水脈氏に対する訴訟：杉田水脈議員の「いいね!」が名誉感情を侵害したとして訴訟を起こし、東京高裁で一部勝訴しました。
大澤昇平氏に対する訴訟：大澤昇平氏の名誉毀損ツイートに対して、一部賠償とツイート削除が認められました。

山口氏が関連して起こした訴訟

山口氏も、この事件に関連する発言を行った著名人を名誉毀損で提訴しています。

小林よしのり氏に対する訴訟：漫画家の小林よしのり氏が雑誌に掲載した漫画での名誉毀損を訴え、一部賠償が認められました。
有田芳生氏に対する訴訟：ジャーナリストの有田芳生氏によるツイートでの名誉毀損を訴え、一部賠償が認められました。
大石あきこ氏に対する訴訟：大石あきこ議員のツイートに対して名誉毀損で提訴し、一部賠償が認められました。