女狭穂塚古墳

女狭穂塚古墳（めさほづかこふん）は、宮崎県西都市三宅に位置する、古墳時代中期に築造された大型の前方後円墳です。西都原古墳群の中でも特に重要な古墳の一つであり、男狭穂塚古墳と隣接して、西都原台地の中央部に存在します。

概要

女狭穂塚古墳は、西都原古墳群の丸山支群を構成し、320基以上もの古墳が密集する地域において、最大級の規模を誇ります。墳丘は3段に築成され、全長は約176メートルに及びます。墳丘の周囲には二重の周堀が巡らされていますが、外濠は完全には一周していません。この古墳は、現在宮内庁の管理下にあり、「女狭穂塚陵墓参考地」として指定されています。

これまでに、宮崎県教育委員会による測量調査や地中レーダー探査が実施されており、古墳の構造や築造時期に関する知見が深められてきました。これらの調査の結果、女狭穂塚古墳と男狭穂塚古墳の間には重複した構造がないことが確認されています。また、古墳の築造場所は、西から延びる小丘陵の先端部を利用しており、土量を確保するために計画的に選定されたと考えられています。

特徴

女狭穂塚古墳の最大の特徴は、その規模の大きさです。全長176メートルという墳丘長は、九州地方においても最大級であり、その後の古墳と比較しても突出した規模を誇ります。墳丘からは、円筒埴輪や形象埴輪が検出されており、これらの埴輪は、野焼きによって焼成されたと見られています。特に、形象埴輪には、家形、鶏形、盾形、冑形、肩甲形、短甲形、草摺形など、多様な種類が含まれており、当時の文化や社会を知る上で重要な資料となっています。

出土した円筒埴輪は、器壁が厚く、突帯端面が重厚で、淡褐色であり、黒斑が見られる特徴があります。男狭穂塚古墳の出土埴輪とは製作技法が異なり、男狭穂塚古墳の埴輪は窖窯で焼成されたと考えられています。これらの違いは、古墳群内における勢力や技術の差を示すものと考えられています。

築造時期と歴史的背景

女狭穂塚古墳は、男狭穂塚古墳とほぼ同時期の5世紀前半頃に築造されたと推定されています。当時の西都原古墳群は、台地縁辺部に複数の首長墓系列が並立していましたが、男狭穂塚古墳と女狭穂塚古墳の築造によって、それらの勢力が統合されたと考えられています。しかし、これらの古墳の後に築造された古墳は規模が縮小しており、南九州の盟主墳は横瀬古墳へと移行することになります。

この古墳群は、1934年に国の史跡に、1952年には国の特別史跡に指定されていますが、男狭穂塚古墳と女狭穂塚古墳の古墳域は、陵墓参考地であるため、史跡には含まれていません。

遺跡歴

女狭穂塚古墳は、1895年に宮内省によって陵墓参考地に治定されました。その後、1926年に測量調査が行われ、1997年度には宮崎県教育委員会による立ち入り測量調査が実施されました。また、2004年から2010年にかけては、地中レーダー探査が行われ、古墳の詳細な構造が明らかになってきました。

墳丘の規模

1997年度の測量調査による墳丘の規模は以下の通りです。

墳丘長：176.3メートル
後円部：3段築成
直径：96.1メートル
高さ：14.6メートル
くびれ部
幅：71.1メートル
前方部：3段築成
幅：109.5メートル
高さ：12.8メートル
内濠：幅14-18メートル
* 周堤帯：幅15-18メートル

被葬者

女狭穂塚古墳の被葬者は特定されていません。宮内庁は、この古墳を木花開耶姫の陵墓参考地としていますが、実際の被葬者を示す確実な証拠は見つかっていません。また、一説には、この古墳が仲津山古墳を参考に築造されたとし、被葬者を日向髪長媛とする説も存在します。

陪塚

女狭穂塚古墳の周辺には、西都原169号墳と西都原171号墳が陪塚として存在します。西都原169号墳は円墳で、西都原171号墳は方墳です。これらの陪塚からも埴輪や副葬品が出土しており、女狭穂塚古墳との関連性が指摘されています。

西都原169号墳

西都原169号墳は、直径49メートル、高さ6.5メートルの円墳で、3段に築成されています。墳丘からは、円筒埴輪や形象埴輪が出土しており、特に、壺形、家形、蓋形、盾形、靫形、甲形、冑形、船形の埴輪が見つかっています。また、小型珠文鏡、直刀、刀子、鉄斧、銅釧、竹櫛、鉄鏃などの副葬品も出土しており、この古墳の被葬者が有力者であったことを示唆しています。

西都原171号墳

西都原171号墳は、一辺約20.8メートルの方墳で、2段に築成されています。墳丘からは、円筒埴輪や、壺形、家形、盾形、蓋形、短甲形の形象埴輪が検出されています。この方墳の形状は、女狭穂塚古墳と相似形の仲津山古墳の陪塚が方墳であることとの関連性も指摘されています。

現地情報

所在地は、宮崎県西都市大字三宅です。普段は陵墓参考地のため立ち入りはできませんが、西都古墳まつりの際に特別参拝が許可されます。交通アクセスは、宮交シティバスターミナルから宮崎交通バスを利用し、「西都原考古博物館前」バス停で下車します。

周辺情報

周辺には宮崎県立西都原考古博物館があり、男狭穂塚古墳と女狭穂塚古墳の模型などが展示されています。

女狭穂塚古墳は、古代の歴史や文化を伝える重要な遺跡であり、その規模の大きさや出土品は、当時の社会構造や技術水準を理解する上で、貴重な情報源となっています。今後も、この古墳に関する調査や研究が進められることによって、新たな発見が期待されます。

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