妙法寺 (横浜市磯子区)

妙法寺は、神奈川県横浜市磯子区杉田に位置する日蓮宗の寺院です。牛頭山を山号とし、旧本山は中山法華経寺、達師法縁に属する中本山格の寺院です。

歴史

妙法寺の歴史は、六浦上行寺と並び、浄行院日祐聖人によって開かれ、妙法院日荷聖人によって基礎が築かれたとされています。室町時代以降は、間宮家の菩提寺として一族の墓所が設けられました。歴代住職には「聖人」号が与えられており、その由緒が伺えます。

もともとは弘法大師が開創した真言宗の寺院であり、当時は現在の坪呑公園付近に奥の院があり、牛頭天王が祀られていました。山号の「牛頭山」も、この牛頭天王に由来します。かつては周辺に梅林が広がり、江戸時代には「杉田梅林」として知られていましたが、現在は境内にわずかに残るのみとなっています。開基の日荷聖人は、仁王像を単身で身延山に奉納したという伝説があり、足腰の守護神として信仰を集めています。

寺院の縁起は、日本武尊の伝説に遡ります。日本武尊が東国征伐の際に、走水の沖合で海が荒れた際、妃の弟橘姫が海に身を投じて鎮めたという逸話があります。海が晴れると杉田の山が見え、その姿が牛が寝そべっているように見えたことから、日本武尊はその地に武神である須佐之男命（牛頭天王の化身）を感じ、杉田の浜に船を寄せました。この時、日本武尊が携えていたのは、須佐之男命が八岐大蛇を倒した際に手に入れた天叢雲剣（別名：草薙剣）でした。また、浜には弟橘姫の櫛が流れ着いており、日本武尊は山頂の松の根元に櫛を埋め、東国征伐の成功を祈願したとされています。

弘仁元年（810年）、諸国を巡っていた弘法大師が杉田を訪れ、日本武尊の伝説に感銘を受け、松のそばに小さな社を建てて須佐之男命（牛頭天王）を祀ったのが、妙法寺の始まりとされています。当時は真言宗牛頭山自下寺という名称でした。

その後、杉田の領主であった荒井因幡守光善が牛頭天王に国家安全を祈願したところ、「お前の師は下総中山の日祐なり」とのお告げを受けました。これにより、因幡守は中山法華経寺で出家し、妙法院日荷と名乗るようになりました。日荷聖人は杉田に戻り、法華経を広め、文和元年（1352年）に自下寺を日蓮宗に改宗し、牛頭山妙法寺と改めました。

日荷聖人は、金沢の称名寺にあった仁王像を「身延山に相応しい」と考え、称名寺の住職と囲碁で勝負し、見事勝利。仁王像を身延山に奉納したという逸話が残されています。また、道中で咳病にかかり、榧の実を食べて治癒したことから、その苗木を妙法寺と六浦上行寺に植えたとされています。

天正年間には、杉田村一帯の領主であった間宮信繁が、この地に梅を栽培し、梅の名所として知られるようになりました。歌川広重の浮世絵にも描かれ、書籍でも紹介されるほどでした。最盛期には3万6千本もの梅がありましたが、火災や農地解放の影響で、現在は往時の面影はわずかに残るのみとなっています。しかし、本牧の三渓園の梅は、妙法寺から植林したものだと言われています。

境内

妙法寺の境内には、以下の建物や祠があります。

牛頭天王殿
白龍弁財天
於徳地蔵尊
三十番神堂
瘡守稲荷大明神

文化財

妙法寺には、以下の文化財が所蔵されています。

日祐筆 題目曼荼羅
妙法寺のビャクシン

山門前には、樹齢約600年と推定されるビャクシンの古木があり、「かながわの名木100選」にも選ばれています。

旧末寺

日蓮宗は昭和16年（1941年）に本末を解体したため、現在では旧本山、旧末寺と呼びならわされています。

頂龍山了源寺（川崎市幸区北加瀬）
* 法性山隨縁寺（横浜市磯子区上中里町）

妙法寺は、歴史と伝説が織りなす、魅力的な寺院です。古くからの信仰を守り、地域の人々に親しまれています。

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