妻二人

妻二人：愛と裏切り、そして複雑な真実

1967年、大映製作により公開された『妻二人』は、増村保造監督、新藤兼人脚本による、複雑な人間関係と衝撃的な事件を描いたサスペンスドラマです。パトリック・クェンティンの小説『二人の妻をもつ男』を原作とし、若尾文子、高橋幸治、岡田茉莉子ら豪華キャストが出演しています。

物語の中心人物は、作家を夢見る柴田健二。彼は恋人の雨宮順子の支えを受けながら執筆活動に励んでいますが、順子の尽力によって婦人雑誌社の編集者として働くことになります。そこで社長の娘で社長秘書の永井道子と出会い、結婚します。

順子との関係に終止符を打った健二は、道子と順風満帆な生活を送っているかに見えます。しかし、数年後、バーで偶然再会した順子は、暴力的な恋人・小林章太郎から虐待を受けていました。健二は章太郎を懲らしめますが、章太郎もまた作家を志しており、彼の才能に気づきます。

一方、道子には、彼女とそりが合わない妹・永井利恵がいます。健二は章太郎を利恵に紹介し、二人は急速に接近。やがて結婚を誓い合うまでに至ります。

しかし、この状況に、道子は章太郎に不信感を抱きます。章太郎は、道子に衝撃的な事実を暴露します。それは、道子が推進する障害児救済基金の横領、そして社長と会計係の妻の不倫関係といった、婦人雑誌社のイメージを著しく損なうスキャンダルです。

章太郎は順子から指輪と拳銃を奪い、彼女を追い出します。金に困った順子は健二にすがりますが、その様子を住み込みの女中が目撃します。道子は健二に大阪出張を告げ、順子に金を渡そうとしますが、章太郎に襲われ、彼を射殺してしまいます。

章太郎の死体発見後、社長は利恵に嫌疑がかからないよう、健二と利恵が犯行時刻に一緒にいたと偽証するように指示します。警察は、順子を容疑者として逮捕します。健二は、順子のアリバイを証明するため、彼女が犯行時刻に自分と一緒にいたと証言しようとしますが、二人の過去の関係が証言の信用性を落とします。

さらに、女中の証言も買収され、健二は解雇されます。真実を追い求める健二は、社長と会計係の不倫関係と基金の横領を知り、道子にその夜の行動を問い詰めます。道子は、章太郎を殺害したことを告白します。罪悪感に苛まれた道子は、自殺を図りますが、健二に止められ、自首します。

釈放された順子と健二は警察署で再会します。順子の愛情に心を揺さぶられながらも、健二は道子と生きることを決意します。二人の複雑な愛の物語は、静かに幕を閉じます。健二の選択は、彼の苦悩と葛藤を浮き彫りにし、観る者に深い余韻を残します。

この映画は、人間の愛と欲望、裏切りと葛藤、そして社会の闇をリアルに描き出した傑作と言えるでしょう。登場人物たちの複雑な心理描写、緊迫感あふれる展開、そして予想外の結末は、多くの観客を魅了し続けています。時代を超えてなお、その魅力は色あせることがありません。

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