姫宮接子

姫宮接子：昭和を彩ったタップの名手

姫宮接子（ひめみや せつこ、1920年7月29日生、没年不詳）は、昭和初期から中期にかけて活躍した日本の女優であり、卓越したタップダンサーとしても名を馳せました。彼女の華麗な足跡は、ムーランルージュの舞台から映画界へと広がり、戦後の巡業や舞台公演を通して、多くの人々に感動と興奮を与えました。

生い立ちとムーランルージュでの活躍

姫宮接子は、東京府日本橋区（現在の東京都中央区）で生まれたと考えられていますが、石川県珠洲郡飯田町（現在の珠洲市）が出生地であるという説も存在します。本名は林縫子、または林綾子と伝えられています。

1935年、高等小学校を卒業後、姫宮はムーランルージュ新宿座に入団。その美貌と卓越したタップダンスの技術はたちまち評判となり、明日待子、小柳ナナ子らと並び、同世代の看板スターとして人気を集めました。ムーランルージュでの活躍と並行して、同年には新興キネマの映画『若人の世界』で映画デビューを果たし、女優としてのキャリアもスタートさせました。

中川三郎との出会いと舞台活動

1937年3月、姫宮は東京吉本に所属し、日本におけるモダンダンスの先駆者として知られる中川三郎とペアを組みました。音楽評論家の瀬川昌久は、後年の著書で二人を「当時のダンス界を牽引する存在」と評しています。姫宮自身も、タップダンスにおいて「女流日本一」と称されるほどの腕前を持っていました。

1938年3月、中川が吉本を脱退すると、姫宮も吉本の舞台を離れ、日活多摩川撮影所に所属し映画を中心に活動します。当時、日活では健康的な娘役が不足していたため、姫宮は貴重な存在として重宝されました。また、タップダンサーとしては「姫宮接子とその楽団」を率いて、独自の公演活動も展開しました。

戦時下の活動と改名

1940年代に入り、芸能に対する政府の統制が強まると、姫宮の名前が不敬であるとされ、姫美谷 接子（ひめみや せつこ）に改名しました。第二次世界大戦中も、少なくとも1944年までは活動を続けていたことが確認されています。

戦後の活動と晩年

戦後、1946年に芸名を姫宮接子に戻し、由利健次らと共に一座を結成し、約2年間全国を巡業しました。その後は、1955年頃まで芸能活動を行っていたことが確認されています。また、1999年には存命であったという情報も残されていますが、その後の消息は不明です。

フィルモグラフィ

若人の世界（1935年）
王者目指して（1935年）
五々の春（1936年）
浮かれ桜（1936年）
牛づれ超特急（1937年）
僕は誰だ（1937年）
花束の夢（1938年）
押切り混線記（1939年）
男一度（1940年）
盗まれかけた音楽祭（1946年）
爆笑青春列車（1955年）

舞台作品

軽喜劇 男嫌い女嫌い（1937年）
松竹座 実演 タツプ・タツプ・シヨウ（1938年）
歌とタップ（1943年）
歌謡ショウ（1943年）
現代劇 新しき産声（1944年）

著書

* タップを踊る（1939年）

姫宮接子は、昭和の芸能史において、タップダンスという新しい表現方法を確立し、多くの人々に夢と希望を与えた功績は、決して忘れることはできません。彼女の華麗な足跡は、今もなお、私たちの心に輝き続けています。

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