瀬川昌久

瀬川昌久は、1924年6月18日に東京府で生まれ、2021年12月29日に97歳で亡くなった日本の評論家です。音楽、映画、ミュージカルと幅広い分野で評論活動を行い、特にジャズへの造詣が深く、日本ポピュラー音楽協会の名誉会長も務めました。また、『月刊ミュージカル』の元編集長としても知られています。

生い立ちと学歴

瀬川は学習院初等科から東京帝国大学法学部まで進み、その間、三島由紀夫と親交がありました。1944年には学徒出陣で海軍に入隊。終戦後は引揚者の輸送任務に従事し、氷川丸に乗船していました。この際、乗組員を慰労するため、日本劇場で公演していたバンドを船内に招いてジャズコンサートを開催したというエピソードが残っています。1950年に東京大学法学部を卒業後、富士銀行に入行しました。

ジャズ評論家としての活動

1953年にニューヨークへ赴任したことが、彼の評論活動の転機となりました。チャーリー・パーカーやデューク・エリントンらの演奏に触発され、評論活動を開始。特に戦前ジャズのレコード発掘と紹介に力を注ぎ、『レコード・コレクターズ』誌に多数の寄稿を行いました。1979年に富士銀行を退職してからは、音楽関連のレクチャーやコンサートの企画に力を注ぎました。

文化的な功績

瀬川は、2015年に文化庁長官表彰を受賞しました。2016年には『瀬川昌久自選著作集1954-2014』の出版を記念した祝賀会が開かれ、湯川れい子が祝辞を述べ、著作で対談相手を務めた蓮實重彦もその功績を称えました。

著書

瀬川は数多くの著書を執筆しており、代表的なものに『ジャズで踊って―舶来音楽芸能史』があります。この著書は、サイマル出版会、清流出版、草思社文庫から版を変えて刊行されており、彼の音楽への情熱と深い知識が伺えます。その他にも、『瀬川昌久自選著作集 チャーリー・パーカーとビッグ・バンドと私 1954-2014』や、蓮實重彦との対談集『アメリカから遠く離れて』などがあります。

その他の活動

瀬川は、野口久光のジャズ作品集の編集や、ミュージカル作品ガイドの監修も務めました。また、ジャズの歴史に関する講演やイベントにも積極的に参加し、その知識と情熱を多くの人々に伝えました。ラジオ番組への出演や、CDの監修も行い、多岐にわたる分野で活躍しました。

親族

瀬川家は医学者や実業家など、各界で活躍する人物を多く輩出しています。祖父は医学者の瀬川昌耆、父は実業家の瀬川昌邦、弟には映画監督の瀬川昌治がいます。

瀬川昌久は、その生涯を通じて音楽、特にジャズへの深い愛情を持ち続け、日本の音楽文化に多大な貢献をしました。彼の業績は、今後も多くの人々に語り継がれることでしょう。

主な著作

『ジャズで踊って―舶来音楽芸能史』（サイマル出版会、1983年）
『舶来音楽芸能史―ジャズで踊って』（清流出版、2005年）
『ジャズで踊って―舶来音楽芸能史』（草思社文庫、2023年）
『瀬川昌久自選著作集 チャーリー・パーカーとビッグ・バンドと私 1954-2014』（河出書房新社、2016年）
『一冊でわかる ミュージカル作品ガイド100選』監修（成美堂出版、2001年）
『ジャズに情熱をかけた男たち―ブルーコーツ70年の歩み』（長崎出版、2004年）
『日本ジャズの誕生』（青土社、2008年）※大谷能生との共著
『アメリカから遠く離れて』（河出書房新社、2020年）※蓮實重彦との対談集

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