姫路空襲

姫路空襲

姫路空襲（ひめじくうしゅう）は、第二次世界大戦終結間際の1945年、兵庫県姫路市が経験した二度にわたる大規模な空襲を指します。特に6月22日の昼間に行われた工場への攻撃と、7月3日深夜から4日未明にかけての市街地への猛爆撃は、街に壊滅的な被害をもたらしました。

1945年6月22日：軍需工場への爆撃

最初の空襲は1945年6月22日午前9時50分頃に発生しました。アメリカ陸軍航空軍第21爆撃集団所属の第58爆撃団によるB-29爆撃機約60機（米軍記録では52機）が飛来しました。この空襲の主な標的は、播但線京口駅の西側に位置していた川西航空機姫路製作所でした。

午前9時46分から午前10時37分にかけて、約1時間にわたり集中的な爆撃が行われました。投下されたのは主に高性能爆弾AN-M64で、その総量は米軍記録によると350.7米トンに及びました。結果として、目標とされた川西航空機姫路製作所は完全に破壊されました。さらに、爆撃は周辺地域にも及び、多くの民家、道路、さらには生活に不可欠な上下水道などのインフラ設備にも深刻な被害が発生しました。

この爆撃による人的被害も甚大でした。製作所で働いていた徴用工、学徒動員された学生、社員を含む従業員に加え、周辺住民など、合計341名の尊い命が失われました。また、10220名が被災しました。

1945年7月3日深夜から4日未明：市街地への焼夷弾攻撃（姫路大空襲）

二度目の空襲は、より大規模かつ壊滅的なものであり、「姫路大空襲」とも呼ばれます。1945年7月3日午後4時23分（日本時間）、マリアナ諸島の基地から徳島、高松、高知、そして姫路への爆撃任務のため、501機ものB-29爆撃機が出撃しました。これらの部隊の一部が硫黄島を経由し、姫路へと向かいました。

姫路への攻撃は、同日深夜11時50分から翌7月4日未明1時29分にかけて行われました。アメリカ陸軍航空軍第21爆撃集団所属の第313爆撃団による106機のB-29爆撃機が投入されました。この攻撃の標的は軍事施設ではなく、姫路城南東部を基準点とした半径約1200メートル圏内の市街地全域でした。

投下されたのは大量の焼夷弾であり、その総量はE46型546.6米トン、AN-M47A2型220.5米トンの合計767.1米トンに及びました。市街地に降り注いだ焼夷弾により、瞬く間に火の手が上がり、姫路駅前から広がった炎は街全体を覆い尽くしました。特に「内町」と呼ばれた市街中心部（現在の白鷺小中学校区や城東小学校区西部にあたる地域）は、ほぼ壊滅状態となりました。

火災の被害は中心部にとどまらず、その周囲や、工場が多数立地していた姫路駅南側、さらにはこれらの地域から離れた場所にも及びました。結果として、当時の総戸数と総人口のそれぞれ約40パーセントが被災するという壊滅的な状況となりました。当時飾磨市だった地域の一部もこの空襲で被害を受けました。

この夜間焼夷弾攻撃による人的被害は、死者173名、重軽傷者160名以上、全焼家屋約1万300戸に及びました。被災者は45182名に上りました。

歴史的建造物である姫路城も爆撃の対象区域内に含まれていましたが、幸運にも天守に命中した焼夷弾は発火せず、城の象徴である天守閣の焼失は免れました。その白く美しい姿は、焼け野原となった街で絶望に打ちひしがれる被災した市民にとって、心の支え、復興への希望となったとも伝えられています。

この凄惨な空襲を経験した郷土史研究家の高橋秀吉氏は、当時南畝町に居住しており、その経験や被災状況に関する写真などの資料を収集し、「高橋秀吉コレクション」として後世に残しています。

姫路空襲が残したもの

二度にわたる姫路空襲は、軍事目標だけでなく、市民生活の基盤や多くの人命を奪い去りました。特に7月の大空襲は、無差別に市街地を焼き払う「絨毯爆撃」の一例であり、戦争の非人道性を示すものとして、今も記憶されています。これらの経験は、平和の尊さを考える上で重要な教訓となっています。

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