絨毯爆撃

絨毯爆撃（Carpet Bombing）

絨毯爆撃とは、一面に爆弾を無差別に投下する攻撃手法を指し、英語では「carpet bombing」と表現されます。この手法は、敵国の民間人や住宅、商業地を対象にした戦略的な爆撃であり、生活の基盤を破壊することによって士気を低下させることを目的としています。絨毯爆撃は、無差別爆撃や都市爆撃、地域爆撃、さらには恐怖爆撃とも呼ばれることがあります。

この攻撃方法は、工場や軍事施設を狙った精密爆撃とは大きく異なります。精密爆撃は特定のターゲットを選んでその破壊を狙うのに対し、絨毯爆撃は一面を覆うように広範囲に爆弾を投下するため、不可避的に多くの民間人が巻き込まれます。この名称は、床に敷かれた絨毯が空間を覆う様子から着想を得たものです。

歴史的経緯

絨毯爆撃の発想は、1921年にイタリアのゼネラル・ジュリオ・ドゥーエにより初めて提唱されました。彼は、軍事と民間人の区別がなくなる総力戦の時代を予見し、空爆がもたらす恐怖効果を強調しました。彼の提案は、民間人を対象にした攻撃が戦争の早期終結に繋がるとの考えに基づいていました。

1937年4月26日、スペイン内戦の中で行われたゲルニカへの爆撃は、焼夷弾を用いた最初の例とされ、絨毯爆撃の象徴的な出来事です。ピカソの著名な絵画『ゲルニカ』はこの無差別爆撃を題材にしており、絨毯爆撃の恐怖を世界に知らしめました。日本でも、1938年から1943年の重慶爆撃では市街地が無差別に攻撃され、絨毯爆撃が行われました。

第二次世界大戦では、1945年のドレスデン爆撃が特に注目されます。ここでは米軍が無差別爆撃を行い、焼夷弾や核兵器を用いて多くの民間人を犠牲にしました。また、連合国軍の「コブラ作戦」において、軍事目標に対する絨毯爆撃が行われた稀な例も見られました。

国際法と現状

国際法の観点から見ると、絨毯爆撃の実施はハーグ陸戦条約やジュネーブ諸条約に違反するとされています。特に攻撃の軍事目的主義に反するため、無差別爆撃は国際的に非難の対象となります。現代の戦争では、兵器の精密化が進み、精密爆撃や誘導弾攻撃が主流となっている一方、絨毯爆撃は次第に姿を消しつつあります。

派生表現

また、技術用語としても「絨毯爆撃」という表現は使われています。Appleのウェブブラウザ「Safari」には、「Safari Carpet Bomb（Safari絨毯爆撃）」という脆弱性が存在していました。この脆弱性により、ユーザーの意図しないファイルが自動的にダウンロードされ、デスクトップが混乱を引き起こすことから、この名称がつけられました。

参照文献

• - 荒井信一『空爆の歴史　終わらない大量虐殺』岩波書店
• - 三浦俊彦『戦争論理学　あの原爆投下を考える62問』二見書房
• - 笠原十九司『日中戦争全史　下　日中全面戦争からアジア太平洋戦争敗戦まで』高文研

このように、絨毯爆撃は戦争の中で残酷な側面を持つ戦略の一つであり、その歴史や法的な位置付けは重要なテーマの一つとされています。

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