嬰陽王

嬰陽王の生涯と治世

嬰陽王（えいようおう、生年不詳 - 618年）は、高句麗の第26代王として590年から618年にわたり治めた王です。彼の姓は高で、本名は元、平陽王とも称されます。嬰陽王は先代の平原王の長子であり、彼の治世は多くの戦争と文化の発展を促した時代でした。

王位への就任と初期の挑戦

嬰陽王は565年に太子として登用され、590年10月に先代の平原王の死去に伴い王位に即位しました。即位直後、彼は隋より「上開府儀同三司」「遼東郡公」「高句麗王」として公式に称号を受け取ります。しかし、588年、彼は靺鞨の人々を率いて遼西に侵攻し、その行動が隋の文帝の逆鱗に触れました。これが隋の高句麗遠征、いわゆる第一次遠征の引き金となります。

隋は30万人の軍を投入しましたが、長雨と強風に悩まされ早々に撤退することとなりました。これを受けて、嬰陽王は隋に謝罪の使者を送り、一時的な和平が成立しました。しかし、607年には隋の煬帝に見られる形で東突厥の啓民可汗に使者を送る事態が起こり、さらなる対立を引き起こす要因となりました。

戦争の激化と大臣の活躍

次に起こったのは612年から始まる第二次遠征です。この際、大臣の乙支文徳が巧妙な策略を用いて隋軍に潛入しました。彼は偽りの投降を行い、隋軍の内部情報を探ることに成功します。その後、乙支文徳は隋軍と七回対戦し、意図的に敗北することで相手を疲労させ、最終的には7月に敵軍を追い返すことに成功しました。

さらに、613年から614年には第三次および第四次遠征があり、隋国内の混乱によって彼らは軍を撤退させ、高句麗はその隙を突いて百済や新羅に対して攻撃を行いました。特に百済からは石頭城で捕虜三千人を獲得し、新羅からは八千人の捕虜を得るなど、多くの戦果を上げました。

文化的業績と治世の特徴

嬰陽王の治世は戦争だけでなく、文化的な発展も特徴付けられています。600年には大学博士の李文真に命じて、高句麗の古い歴史書『留記』の整理を行わせ、5巻の『新集』にまとめるなど、文学と歴史の発展に寄与しました。また、615年には、高句麗の「大興王」として仏像製作に向けて黄金300両を献じたという記録が『日本書紀』に残されています。最近においても、彼の治世の文化的側面が注目されてきています。

死去と後の評価

618年9月、嬰陽王は29年間の治世を終え、死去しました。王の死後、彼は「嬰陽王」として追悼され、彼の治世は高句麗の歴史において特筆すべき時期と評価されていますが、埋葬地については不明な点が多いのが実情です。彼の統治は、高句麗の国家としての力を強化し、同時に周辺国との関係を複雑にした重要な時期であったと言えるでしょう。

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