啓民可汗

啓民可汗（けいみんかがん）

啓民可汗（? - 609年）は、東突厥の可汗であり、沙鉢略可汗の子として生まれました。彼の称号である「啓民可汗」は、正しくは意利珍豆啓民可汗（El ïduk jamï qaγan）といい、「意智健」を意味します。姓は阿史那氏、名は染干（センガン）です。

生涯

染干は、当初、突利可汗（テリス・カガン）と号し、隋に求婚の使者を送りました。この行動は、大可汗である都藍可汗の怒りを買い、東突厥は二つの勢力に分裂します。

597年、突利可汗は隋の安義公主を娶ります。隋の文帝は、東突厥の分裂を促進するため、突利可汗を手厚く待遇しました。

599年、都藍可汗が達頭可汗と連合して突利可汗を攻撃し、その兄弟や親族を殺害して隋の蔚州に侵入しました。突利可汗は、隋の使者である長孫晟とともにわずか5騎で隋に帰順します。同年10月、隋の文帝から意利珍豆啓民可汗の称号を授与され、大利城を築きました。安義公主が死去していたため、文帝は宗室の娘である義成公主を啓民可汗に娶らせました。12月、都藍可汗が部下に殺害されると、達頭可汗は歩迦可汗（ボジャー・カガン）と名乗り、啓民可汗と対立しましたが、隋と連携した啓民可汗が常に優位に立ちました。

601年、啓民可汗に服属していた斛薛などの諸部が反乱を起こしたため、文帝は楊素を雲州道行軍元帥に任命し、啓民可汗を率いて北征させました。歩迦可汗は再び啓民可汗を攻撃しましたが敗北し、吐谷渾へ逃亡しました。

607年5月、啓民可汗は子の拓特勤を隋に朝貢させました。同年、啓民可汗の兄の子である毘黎伽特勤を再び来朝させました。その後も、毎年数回隋に遣使を送り、朝貢を続けました。

609年、啓民可汗は病死し、子の咄吉世が後を継いで始畢可汗となりました。

妻子

可賀敦（皇后）
安義公主
義成公主
婆施氏：頡利可汗の母
子
咄吉世（始畢可汗）
俟利弗設（処羅可汗）
咄苾（頡利可汗）

参考資料

『隋書』(帝紀第二、帝紀第三、列伝第四十九)
護雅夫『古代トルコ民族史研究Ⅰ』(1967年、山川出版社)

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