子供のためのアルバム

ロベルト・シューマン「子供のためのアルバム」

『子供のためのアルバム』（Album für die Jugend）作品68は、ロベルト・シューマンが作曲した43曲からなるピアノ小品集です。当初は『少年のためのアルバム』とも呼ばれていました。この作品は、子供たちのために作曲されたものですが、音楽的な深みと美しさを兼ね備え、今日でも多くの人に愛されています。

作曲の背景

1848年8月30日から9月14日の2週間で作曲されました。最初の7曲は、長女マリーの7歳の誕生日に贈るために『クリスマス・アルバム』として作曲されました。その後、出版社からの提案により「少年のための40のピアノ小品集」と改題されました。第二版では、曲の題名の変更や追加が行われ、全43曲となり、現在の形である『少年のためのアルバム、43のピアノ小品集』として出版されました。初版は1848年12月に、第二版は1851年に出版されています。シューマンの自筆スケッチは、ツヴィッカウに保管されています。

構成

全2部43曲から構成されており、演奏時間は約80分です。

第1部：小さい子供のために

1. メロディ（Melodie）
叙情的な小品で、シンプルな書法が特徴です。
2. 兵士の行進（Soldatenmarsch）
快活な行進曲で、ベートーヴェンのスプリング・ソナタとの関連が指摘されています。
3. 口ずさむ歌（Trallerliedchen）
ハミングを意味するタイトルで、第1曲と似た書法です。
4. コラール（Ein Choral）
「喜べ、おおわが心よ」というコラールで、合唱風の小曲です。
5. 小曲（Stuckchen）
第1曲、第3曲と似た書法を持つ小品です。
6. 哀れな孤児（Armes Waisenkind）
ゆっくりとしたテンポで、途中で変化があります。
7. 狩人の歌（Jagerliedchen）
ユニゾンで始まり、シューマンらしい4度上行の音型が特徴です。
8. 勇敢な騎手（Wilder Reiter）
同じパターンを繰り返す3部構成です。
9. 民謡（Volksliedchen）
もの悲しい音調の小品です。
10. 楽しき農夫（Frohlicher Landmann）
最も有名な小曲の一つで、4度上行の旋律が特徴です。
11. シチリアーナ（Sizilianisch）
シチリア風の舞曲で、3部形式です。
12. サンタクロース（Knecht Ruprecht）
両手のユニゾンで始まる3部形式の曲です。
13. 愛する5月よ（Mai, lieber Mai）
ゆっくりとしたテンポの小品です。
14. 小さな練習曲（Kleine Studie）
アルペジオの練習曲です。
15. 春の歌（Fruhlingsgesang）
心を込めて演奏されるべき曲です。
16. 最初の喪失（Erster Verlust）
ゆっくりとしたテンポの小品です。
17. 朝の散歩をする子供（Kleiner Morgenwanderer）
行進曲で、音型の模倣が特徴です。
18. 刈入れの歌（Schnitterliedchen）
あまり速くないテンポの曲です。

第2部：大きな子供のために

19. 小さなロマンス（Kleine Romanze）
第10曲と似た旋律がユニゾンで奏でられます。
20. 田舎風の歌（Landlisches Lied）
中くらいの速度の曲です。
21. 無題
緩やかに表情豊かに演奏する指示があります。
22. ロンド（Rundgesang）
ロンド形式で、滑らかに演奏する指示があります。
23. 騎手の歌（Reiterstuck）
短く、はっきりと演奏する指示があります。
24. 収穫の歌（Ernteliedchen）
喜ばしい表情で演奏する指示があります。
25. 劇場からの余韻（Nachklange aus dem Theater）
いくらか激しく演奏する指示があります。
26. 無題
速くなく、上品に演奏する指示があります。
27. カノン風の歌（Canonisches Liedchen）
親しげな表情で演奏するカノン風の曲です。
28. 思い出（Erinnerung）
メンデルスゾーンの命日に作曲された、歌うように演奏する曲です。
29. 見知らぬ人（Fremder Mann）
逞しく、力強く演奏する行進曲風の曲です。
30. 無題
ショパンを連想させるゆっくりとした曲です。
31. 戦いの歌（Kriegslied）
きわめて力強く演奏する曲です。
32. シェエラザード（Sheherazade）
ゆっくりと静かに演奏する曲です。
33. ぶどう狩りの歌 - 喜びの時（Weinlesezeit - Frohliche Zeit）
収穫の喜びを表す快活な曲です。
34. 主題（Thema）
親しげな感情を込めて演奏する曲です。
35. ミニョン（Mignon）
緩やかに柔和に演奏する曲です。
36. イタリア人の船乗りの歌（Lied italienischer Marinari）
序奏と主部で構成される曲です。
37. 水夫の歌（Matrosenlied）
やや平板だが、躍動的な動機を持つ曲です。
38. 冬の時 その1（Winterzeit I）
短いハ短調の曲です。
39. 冬の時 その2（Winterzeit II）
シューマン自身の曲『蝶々』の旋律が登場します。
40. 小さなフーガ（Kleine Fuge）
3声の前奏曲とフーガで構成される曲です。
41. 北欧の歌「ガーデへの挨拶」（Nordisches Lied "Gruss an G"）
友人のガーデの綴りを基にした曲です。
42. 装飾的コラール（Figurierter Choral）
ジュネーヴの讃美歌を基にした装飾的なコラールです。
43. 大晦日の歌（Silvesterlied）
直筆に「Zum Beschluß」と書かれたイ長調の曲です。

追加曲

WoO.16: 第2版の出版後に追加された曲
隠れているかっこう
ヴェネツィアの入り江
鬼ごっこ
小さなワルツ ト長調
WoO.30: WoO.16と同じく追加された曲
ごく小さい子供のために
お人形の子守歌
荒々しい騎手
ウェーバーの酒飲みの歌
ゴンドラにて
小品 ハ長調
小品 ニ短調
断章 変ホ長調
前奏曲 イ長調
判じ絵
熊の踊り
L.v.ベートーヴェンの有名なメロディ
W.A.モーツァルトの小品

参考資料

『作曲家別名曲解説ライブラリー23 シューマン』 音楽之友社,1995年
『名曲事典 ピアノ・オルガン編』 音楽之友社,千蔵八郎,1977年

関連項目

子供の情景

外部リンク

子供のためのアルバムの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

この楽曲集は、シューマンが子供たちへの愛情を込めて作曲したものであり、教育的な側面だけでなく、音楽的な豊かさも兼ね備えています。子供だけでなく、大人も楽しめる名作と言えるでしょう。

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