子供の時間

子供の時間

『子供の時間』は、1925年（大正14年）7月12日から1941年（昭和16年）3月31日まで、日本放送協会（NHK）ラジオ第一放送で放送された子供向けラジオ番組です。毎週月曜日から土曜日（祭日を除く）の午後6時から30分間放送され、当時の子供たちから絶大な人気を集めました。

番組の概要

番組は、東京放送局（現在のNHKラジオ第1放送）の本放送開始と同時にスタートしました。企画したのは、当時東京放送局の職員であった門野重九郎氏です。彼は、少年少女の健全な成長を願い、この番組を編成しました。

当初は不定期放送で、童謡などの歌を中心に放送されていましたが、1926年（大正15年）9月からは午後6時からの放送に定着しました。1928年（昭和3年）11月には、昭和天皇の即位を記念して全国放送となりました。それまでは各放送局が独自に子供向け番組を制作していましたが、全国放送開始後は、東京、大阪、名古屋の各放送局が交代で番組を制作し、童話やラジオドラマ、子供向けの音楽などを放送しました。また、番組のテキストとして『月刊コドモのテキスト』が発行されました。

1932年（昭和7年）6月1日からは、『子供の時間』の放送時間が午後6時から20分に短縮され、その後『コドモの新聞』が午後6時20分から5分間放送されるようになりました。

コドモの新聞

『コドモの新聞』は、『子供の時間』に続いて放送されたニュース番組です。1928年（昭和3年）5月20日から大阪中央放送局がローカル番組として放送していた『コドモ日曜新聞』が前身です。

時事、科学、スポーツなどのニュースから子供向けの話題を選び、分かりやすい言葉で放送したところ好評だったため、全国放送されることになりました。童話作家の巖谷小波や久留島武彦らが編集に加わり、「大人向け新聞の焼き直しになってはならない」という考えのもと、子供向けのニュースを作成しました。

放送初日の1932年（昭和7年）6月1日には、帝国議会の話題や、カナダ在住の日系人少年が軍用犬と軍鳩のために寄付をした話題、動物園から逃げ出したライオンが射殺された話題などを放送しました。

アナウンサーには、柔らかく親しみやすい話し手として、東京中央放送局児童課の職員であった関屋五十二と、童話作家の村岡花子が選ばれました。二人は一週間交代で番組を担当し、子供たちや母親から「村岡のおばさん」「関屋のおじさん」と親しまれました。

1941年（昭和16年）11月28日の放送で、村岡花子は「一週間経ったら、またお話しましょうね。では皆さん、ごきげんよう、さようなら。」と挨拶して番組を降板しました。翌週は関屋五十二が担当しましたが、その次の村岡花子の担当日である12月8日に、情報局から「太平洋戦争開戦の大戦果を放送するのに女性の声はふさわしくない」という申し入れがあり、急遽男性アナウンサーに変更されました。そのため、村岡は子供たちに挨拶することもできないまま、9年間担当した『コドモの新聞』を降板せざるを得ませんでした。

関屋五十二はその後も番組を担当しましたが、1943年（昭和18年）10月に降板し、以降は放送局のアナウンサーが交代で担当しました。番組の内容は徐々に戦争関連の話題が増えていきましたが、子供に分かりやすく伝えるという姿勢は変わらなかったと言われています。

番組の終焉

1941年（昭和16年）年末に村岡花子が番組を降板し、翌年には番組名が『少国民の時間』に変更されました。番組内容は戦時色が強くなっていきましたが、番組自体は存続し、1945年（昭和20年）8月15日の終戦とともに放送を終了しました。

その他

2014年（平成26年）に放送されたNHK連続テレビ小説『花子とアン』は、村岡花子の半生を原案とした作品です。番組の最後に語りの美輪明宏が言う「ごきげんよう、さようなら」という挨拶は、『コドモの新聞』で村岡花子が番組の最後に言っていた挨拶に由来しています。物語の後半では、『コドモの新聞』に出演した際の様子も描かれています。

なお、ドラマでのアナウンス指導は、『ラジオ深夜便』でアンカーを務める明石勇が行いました。

関連書籍

日本放送協会編『放送五十年史』（日本放送出版協会、1977年3月）
日本放送協会編『放送の五十年 昭和とともに』（日本放送出版協会、1977年3月）

脚注

参考文献

関連項目

週刊こどもニュース
きこえタマゴ!

外部リンク

子供の時間（ラジオ） - NHK放送史
子供の時間 - NHK放送史
コドモの新聞 - NHK放送史
コドモの新聞 - NHK放送史
少国民の時間 - NHK放送史
少国民の時間 - NHK放送史
仲よしクラブ - NHK放送史
なかよしホール - NHK放送史

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