子連れ狼 (若山富三郎版)

『子連れ狼』映画シリーズ：時代劇の金字塔

『子連れ狼』は、小池一夫・小島剛夕による同名漫画を原作とした、若山富三郎主演の映画シリーズです。1972年から1974年にかけて全6作が製作され、時代劇に新たな風を吹き込みました。

制作の背景

この映画シリーズは、勝新太郎がプロデューサーとして参加した「勝プロダクション」によって制作されました。勝新太郎は若山富三郎の実弟にあたり、兄弟タッグによってこの作品は誕生しました。元々、小池一夫が勝新太郎主演の『座頭市血笑旅』から発想した企画であり、主演は当初渡哲也にオファーされましたが、若山富三郎が熱烈なラブコールを送り主演を射止めたというエピソードがあります。

制作秘話

若山富三郎は原作漫画の大ファンであり、自ら作者の小池一夫に「ぜひ主演で映画製作を」と直談判しました。その熱意は凄まじく、小池氏の自宅の庭で刀を手に宙返りを披露し、水鴎流の達人である拝一刀を演じる熱意を見せました。この熱意に打たれた小池氏は、契約書も交わさないまま若山氏に主演を託したと言われています。

また、勝新太郎にもテレビ局から『子連れ狼』のテレビ映画主演の依頼がありましたが、兄である若山富三郎の熱意を知り、映画化をプロデュースすることに。勝が権利を買い取り、若山が主演を務めるという形で映画化が決定しました。

東映との軋轢

当時、若山富三郎は東映の看板スターの一人であり、他社の作品に主演することは異例でした。東映は独立プロの製作映画の配給をしない方針を打ち出しており、若山の出演は問題視されました。しかし、若山が東映社長に直接訴え、過去の大映への恩義もあったことから、特例として若山の貸し出しが認められました。

東宝との提携

配給は当初大映が予定されていましたが、勝新太郎は東宝との提携を進めました。東宝は当時経営が不安定でしたが、勝との提携によって『座頭市シリーズ』を成功させていました。東宝は勝プロに対し、破格の条件を提示し、年間6本の契約と製作費の無利子融資を約束しました。

シリーズの終焉と影響

『子連れ狼』はダイナミックなアクション時代劇映画として人気を博し、初公開年で4作が立て続けに制作されるヒットシリーズとなりましたが、ネタ切れもあり、『子連れ狼 地獄へ行くぞ!大五郎』で制作終了となりました。

しかし、その影響は大きく、若山の殺陣の技術は高く評価され、海外でも高い評価を受けました。特に、過激な殺陣シーンは「元祖スプラッター・ムービー」とも呼ばれ、後の映画作品に大きな影響を与えました。

テレビドラマ化の波紋

映画シリーズのヒットに並行して、1973年には萬屋錦之介主演でテレビドラマ版が制作されました。若山富三郎はこのテレビドラマ化に激怒し、勝新太郎が間に入ってなだめたというエピソードがあります。また、配給元の東宝もテレビドラマ化に強く反対し、若山自身も自らの当たり役を他人に演じられることが悔しく、映像化権を持っていた勝プロダクション社長・勝新太郎に抗議しましたが、結局勝は映像化権を売却し、テレビ版の製作が決定しました。このため若山・勝兄弟は一時不仲になった。

海外での評価

アメリカでは、『子を貸し腕貸しつかまつる』と『三途の川の乳母車』を1本に編集した『Shogun Assassin』が公開され、高く評価されました。クエンティン・タランティーノをはじめ、多くの映画監督や映画ファンにリスペクトされています。

まとめ

『子連れ狼』映画シリーズは、若山富三郎の迫真の演技、小池一夫の原作、そして勝新太郎のプロデュースによって生まれた時代劇の金字塔です。その過激な描写と斬新なアクションは、後の映画作品に大きな影響を与え、今もなお多くのファンを魅了し続けています。

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