子鶴郷

子鶴郷（こつるごう）とは

子鶴郷は、平安時代に陸奥国行方郡に存在したとされる郷です。郷とは、当時の行政区画の一つで、現在でいう市町村のような役割を担っていました。この子鶴郷に関する記録は、平安時代中期の辞書である『和名類聚抄』にその名が記されていること以外、詳しいことは分かっていません。

現在の所在地

子鶴郷の具体的な場所については、複数の説がありますが、最も有力とされているのが、現在の福島県南相馬市原町区鶴谷地区であるという説です。この説は、行方郡があったとされる南相馬市に「鶴谷（つるがい）」という地名が存在すること、そして、『和名類聚抄』に記載されている子鶴郷の「子」の字が、当時の他の郷名にも見られる接頭語的な用法であることから提唱されました。鶴谷地区は、太田川の右岸（南岸）、磐城太田駅の南西に位置しています。

『和名類聚抄』

『和名類聚抄』は、平安時代中期に編纂された辞書で、当時の国名、郡名、郷名などを列挙しています。この中に、陸奥国行方郡の郷の一つとして子鶴郷の名前が記されています。この記録は、子鶴郷の存在を示す唯一の同時代資料であり、古代の地方行政区画を研究する上で非常に重要な資料です。

地名と歴史

子鶴郷が鶴谷地区であるとする説は、地名が古代の歴史を伝える上で重要な手がかりとなることを示しています。地名には、その土地の歴史や文化、地理的な特徴などが凝縮されており、歴史研究において貴重な情報源となります。鶴谷という地名が、古代の子鶴郷とどのような繋がりを持つのか、今後の研究が期待されます。

まとめ

子鶴郷は、平安時代の陸奥国行方郡に存在した郷であり、現在の福島県南相馬市原町区鶴谷地区がその有力な候補地とされています。その名前は『和名類聚抄』に記録されており、古代の地方行政区画を研究する上で重要な手がかりとなっています。地名と歴史の繋がりを示す事例としても興味深く、今後の研究によって、より詳細な歴史が解明されることが期待されます。

参考文献
藤木海『南相馬に躍動する古代の郡役所 泉官衙遺跡』、新泉社、2016年。
源順『和名類聚抄』、村上勘兵衛により寛文7年刊。国立国会図書館デジタルコレクションで2021年4月に閲覧。

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