孝元天皇

孝元天皇

孝元天皇（こうげんてんのう）は、日本の第8代とされる天皇で、在位は『日本書紀』によれば、孝元天皇元年1月14日から57年9月2日までとされています。大日本根子彦国牽天皇（おおやまとねこひこくにくるのすめらみこと）という名でも知られ、欠史八代の一人として、その実在性については様々な議論があります。

略歴

孝元天皇は、孝霊天皇（こうれいてんのう）の皇子として生まれました。母は皇后の細媛命（ほそひめのみこと）です。同母兄弟はいませんが、異母兄弟には倭迹迹日百襲姫命（やまとととひももそひめのみこと）や彦五十狭芹彦命（ひこいさせりひこのみこと）、稚武彦命（わかたけひこのみこと）らがいます。

19歳で皇太子となり、先帝の崩御翌年に即位しました。在位4年目には都を軽の境原宮（かるのさかいはらのみや）に移し、7年目には穂積臣（ほづみのおみ）の祖である欝色雄命（うつしこおのみこと）の妹、欝色謎命（うつしこめのみこと）を皇后に迎えました。皇后との間には、大彦命（おおひこのみこと）や稚日本根子彦大日日尊（わかやまとねこひこおおひひのみこと、後の開化天皇）などの皇子をもうけました。また、伊香色謎命（いかがしこめのみこと）や埴安媛（はにやすひめ）も妃として迎え、それぞれ彦太忍信命（ひこふつおしのまことのみこと）と武埴安彦命（たけはにやすひこのみこと）をもうけています。

在位57年で崩御され、116歳で亡くなったとされますが、『古事記』では57歳とされています。

名

大日本根子彦国牽天皇（おおやまとねこひこくにくるのすめらみこと）：『日本書紀』での名
彦国牽尊（ひこくにくるのみこと）：『日本書紀』での別名
大倭根子日子国玖琉命（おおやまとねこひこくにくるのみこと）：『古事記』での名
孝元天皇（こうげんてんのう）：漢風諡号（8世紀後半に淡海三船によって撰進）

事績

『日本書紀』や『古事記』には、系譜のみが記載されており、事績についてはほとんど記述がありません。そのため、欠史八代の一人に数えられています。

系譜

父：孝霊天皇
母：細媛命

后妃

皇后：欝色謎命（うつしこめのみこと）：穂積臣遠祖の欝色雄命の妹
妃：伊香色謎命（いかがしこめのみこと）：後の開化天皇の皇后、崇神天皇の母
妃：埴安媛（はにやすひめ）：河内青玉繋の娘

皇子女

第一皇子：大彦命（おおひこのみこと）：四道将軍の一人、阿倍臣、膳臣などの祖
皇子：少彦男心命（すくなひこおこころのみこと）：『日本書紀』一書に記述
第二皇子：稚日本根子彦大日日尊（わかやまとねこひこおおひひのみこと）：第9代開化天皇
皇女：倭迹迹姫命（やまとととひめのみこと）：『古事記』には記述なし
皇子：彦太忍信命（ひこふつおしのまことのみこと）：武内宿禰の祖父
皇子：武埴安彦命（たけはにやすひこのみこと）

年譜

孝霊天皇18年：誕生
孝霊天皇36年：立太子
孝元天皇元年：即位
孝元天皇4年：軽境原宮に遷都
孝元天皇7年：欝色謎命を立后
孝元天皇22年：後の開化天皇を皇太子とする
孝元天皇57年：崩御
開化天皇5年：剣池嶋上陵に葬られる

宮と陵

宮：軽境原宮（かるのさかいはらのみや）。現在の奈良県橿原市大軽町・見瀬町周辺に位置すると伝承されます。
陵：剣池嶋上陵（つるぎのいけのしまのえのみささぎ）。宮内庁により奈良県橿原市石川町にある中山塚古墳に治定されています。

信仰・伝承

孝元天皇は、香川県の與田神社や笠峰神社で主祭神として祀られています。また、以下の神社にも伝承が残っています。

戸隠神社：孝元天皇5年に奥社が創建されたとの伝承があります。
阿智神社：孝元天皇5年に天八意思兼命が降臨したとの伝承があります。
甲佐神社：孝元天皇26年に鎮座したとの伝承があります。
能登生国玉比古神社：孝元天皇の御代に創始されたとの伝承があります。
宮崎神社：孝元天皇の皇子により創建されたとの伝承があります。
豊田神社：孝元天皇の御代に勧請されたとの伝承があります。
雷神社：孝安天皇から垂仁[[天皇]]の御代にかけて異賊を降伏させた伝承があります。
内原王子神社：孝元天皇6年に創建されたとの伝承があります。
乳母屋神社：孝元天皇の時に鎮座したとの伝承があります。

考証

実在性

孝元天皇を含む欠史八代の天皇は、事績の記述が乏しく、その実在性については様々な議論があります。治世の長さが不自然であること、宮や陵の所在地が前期古墳の分布と一致しないことなどから、創作性が強いという意見もあります。一方で、原典の存在や磯城県主との関わりなどから、全てを虚構とすることには否定的な意見もあります。

名称

和風諡号の「おおやまとねこひこ-くにくる」のうち、「くにくる」は国引きの神を表すと解釈する説があり、孝元天皇の原像は国引きの神であったとする説も存在します。

まとめ

孝元天皇は、欠史八代の一人として、謎の多い天皇です。その実在性や事績については、今後の研究が待たれるところです。しかし、多くの神社に伝承が残されており、古代史を語る上で重要な人物であることには変わりありません。

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