孝純太后

孝純太后：悲劇の母、崇禎帝の追慕

孝純太后（こうじゅんたいごう）は、明の泰昌帝の皇太子時代の側室であり、後の崇禎帝の生母です。万暦21年（1593年）に劉氏として生まれました。

生涯

淮安府海州の庶民、劉応元と徐氏の娘としてこの世に生を受けた劉氏は、万暦年間、皇太子朱常洛（後の泰昌帝）の邸に入り、淑女（皇子の側女）となりました。万暦38年（1611年）には、後の崇禎帝となる朱由検を産みました。しかし、万暦42年（1614年）、太子に憎まれ、体罰を受けたことが原因で急死するという悲劇に見舞われます。太子は父である万暦帝からの処罰を恐れ、彼女の亡骸を密かに金山に葬ったとされています。

死後の追尊

天啓2年（1622年）、息子である朱由検が信王に封じられると、劉氏は賢妃として追尊されました。さらに、朱由検が皇帝として即位（崇禎帝）すると、孝純恭懿淑穆荘静毗天毓聖皇太后という諡号が贈られ、泰昌帝の陵に改葬されました。国事に心を痛める日々を送っていた崇禎帝は、実母である孝純太后を深く懐かしみ、傅懿妃や郭定嬪らの協力を得て、彼女の肖像画を描かせました。

また、孝純太后を「智上菩薩」と称え、泰山の長椿寺に祀りました。しかし、その後の明の滅亡により、この祭祀は廃絶されてしまいます。それでも、彼女の肖像画は今日まで残されています。この肖像画は、崇禎帝の母への深い愛情と、彼女の悲劇的な生涯を今に伝える貴重な資料となっています。

孝純太后の死が及ぼした影響

孝純太后の死は、単なる一人の側室の死として片付けられるものではありません。彼女の死は、明朝末期の政治的な混乱や、皇室内の複雑な人間関係を象徴する出来事でした。崇禎帝は、母の死をきっかけに、より一層政治に力を注ぎ、明朝の再興を目指しましたが、その努力も空しく、明は滅亡を迎えることになります。

孝純太后の生涯は、明朝末期の激動の時代を生き抜いた女性の悲劇であると同時に、息子の崇禎帝による追慕を通して、歴史に名を刻むこととなったのです。彼女の人生は、後世の歴史家や研究者によって、様々な角度から考察され続けています。彼女の肖像画は、その波乱に満ちた生涯を、私たちに静かに語りかけているかのようです。

伝記資料

『明熹宗実録』
『崇禎長編』

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