孝翼太后

孝翼太后（こうよくたいごう）は、明の時代を生きた女性で、宣徳帝の妃嬪であり、景泰帝の母として知られています。洪武30年5月16日（1397年6月11日）に生まれ、天順5年12月16日（1462年1月16日）にその生涯を閉じました。姓は呉氏、名は史料には残されていません。

出自と入宮

孝翼太后は、鎮江府丹徒県（現在の江蘇省鎮江市）の出身で、呉彦名（ごげんめい）と申氏の長女として生まれました。容姿端麗で聡明であった彼女は、選ばれて皇太子であった朱瞻基（しゅせんき）（後の宣徳帝）の後宮に入りました。

妃嬪としての歩み

後宮に入った呉氏は、宣徳帝の寵愛を受け、宣徳3年（1428年）には後の景泰帝となる朱祁鈺（しゅきぎょく）を出産しました。この功績により、賢妃の位に封じられました。賢妃としての彼女は、後宮において穏やかで賢明な女性として知られていました。

皇太后としての栄光と転落

正統14年（1449年）冬、土木の変で英宗が捕虜となり、混乱の中で景泰帝が即位すると、呉氏は皇太后に立てられました。皇太后として宮廷の安定に尽力したとされています。しかし、英宗が復位すると、彼女は皇太后の地位を失い、宣徳帝の廟号である宣宗にちなみ、宣廟賢妃へと降格させられました。

最期と諡号

天順5年12月16日（1462年1月16日）、孝翼太后は亡くなりました。諡は栄思（えいし）とされ、金山に葬られました。南明年間に、孝翼温恵淑慎慈仁匡天錫聖皇太后（こうよくおんけいしゅくしんじじんきょうてんしゃくせいこうたいごう）という長い諡号が贈られました。

子

朱祁鈺（しゅきぎょく）：後の景泰帝。

伝記資料

孝翼太后に関する記録は、以下の史料に記されています。

『明英宗実録』：明の歴史を記録した公式文書。
* 『贈昭勇将軍錦衣衛親軍指揮使呉公神道碑銘』：彼女の父親である呉彦名の墓碑。

まとめ

孝翼太后は、明朝の歴史において、妃嬪、皇太后、そして再び妃嬪へと立場が大きく変わった人物です。彼女の生涯は、宮廷の権力闘争と、それに翻弄される人々の運命を象徴しています。激動の時代を生き抜いた彼女の生涯は、後世に多くの教訓と歴史の深さを伝えています。

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