宣徳帝

宣徳帝（せんとくてい）

宣徳帝は、明王朝の第5代皇帝であり、諱を瞻基（せんき）と称します。廟号は宣宗ですが、日本では在位中の元号から宣徳帝として広く知られています。

生涯

宣徳帝は、洪熙帝（こうきてい）こと朱高熾（しゅこうし）の長男として生まれました。父の洪熙帝は病弱であったため、祖父の永楽帝は廃太子を検討したこともありましたが、朱瞻基の聡明さからその計画は撤回されました。若くして永楽帝の親征にも同行し、助言を行うなど、その才能は早くから注目されていました。

洪熙元年（1425年）、洪熙帝が在位わずか1年で崩御すると、朱瞻基は皇帝の座を継ぎ、宣徳帝として即位しました。しかし、その即位に反対する叔父の漢王朱高煦（しゅこうく）による反乱が発生します。朱高煦は永楽帝譲りの軍事的な才能を持ち、かつて立太子も検討された人物でしたが、その暴虐な性格から見送られていました。

宣徳帝の即位直後の反乱は、建文帝が燕王朱棣（後の永楽帝）に簒奪された靖難の変を想起させました。漢王はかつて靖難の変で燕王軍として活躍した人物であり、今度は自らが武力で皇帝の位を奪おうとしました。しかし、宣徳帝は建文帝とは異なり、迅速かつ果断に対処し、反乱を鎮圧しました。捕らえられた朱高煦は監禁されましたが、後に宣徳帝を蹴り倒すという事件を起こし、激怒した宣徳帝によって巨大な銅壷に閉じ込められ、焼き殺されました。この事件は、宣徳帝の祖父や曾祖父譲りの残虐性を示すものとして捉えられています。

漢王の反乱後、宣徳帝は皇族への監視を強化し、丞相を廃止して皇帝独裁体制を確立しました。そのために、内閣大学士の楊栄、楊士奇、楊溥の三人を重用し、彼らは「三楊」と称されました。また、宦官の政治介入を防ぐため、洪武帝が禁止していた宦官への学問を許可し、内書堂という学問所を設立しました。さらに、皇帝の秘書である太監の権限を強化しました。

独裁体制を確立した宣徳帝は内政に力を注ぎ、満洲地区の放棄や大越からの撤退を決定しました。一方で、鄭和による南方航海を再開するなど、単なる領土縮小ではなく、行政制度の整備を目的とした政策を推進しました。これらの政策は、永楽年間に拡大した領土を整理し、より効率的な統治を目指したものでした。

宣徳10年（1435年）、宣徳帝は崩御しました。病弱だった父帝よりも10年以上早く世を去りました。宣徳帝の治世は、父の洪熙帝の治世と合わせて「仁宣の治」と呼ばれ、明の最盛期を築いたと評価されています。特に、磁器の品質においては、宣徳年間のものが万暦年間のものよりも高く評価されています。

宣徳帝は芸術にも才能を発揮し、特に文人画に優れた作品を残しています。しかし、絵を描く際には画家に傍に控えさせ、自分の気に入らない部分を修正させていたと伝えられています。

安定した治世を築いた宣徳帝は高く評価される一方、中央集権体制の確立のために宦官の権力を強化したことは、次代の正統帝の時代に朝廷を混乱させる原因となり、明末まで影響を与えることとなりました。

宗室

正室：恭譲章皇后 胡善祥
長女：順徳公主 - 石璟に降嫁
次女：永清公主 - 早世
継室：孝恭章皇后孫氏
三女：常徳公主 - 薛桓に降嫁
長男：英宗 朱祁鎮 - 第6代、第8代皇帝
側室：賢妃呉氏（孝翼皇后）
次男：景泰帝 朱祁鈺 - 第7代皇帝
殉葬妃10人：端静貴妃何氏、純静賢妃趙氏、貞順恵妃呉氏、荘静淑妃焦氏、荘順敬妃曹氏、貞恵順妃徐氏、恭定麗妃袁氏、貞静恭妃諸氏、恭順充妃李氏、粛僖成妃何氏
側室：国嬪 郭愛

作品

（省略）

登場作品

テレビドラマ
永楽英雄伝（2004年・中国、演：陳龍）
大明皇妃 -Empress of the Ming-（2019年・中国、演：ジュー・ヤーウェン）
永楽帝〜大明天下の輝き〜（2022年、中国、演：張世舉）
尚食〜美味なる恋は紫禁城で〜（2022年、中国、演：シュー・カイ）
小説
* 両京十五日（馬伯庸）

脚注

（省略）

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