学問所奉行

学問所奉行について

学問所奉行は、幕末の江戸幕府において設置された役職です。若年寄の支配下にあり、寺社奉行の次席に位置づけられていました。この役職は、祭酒である林大学頭を指揮し、昌平坂学問所と蕃書調所の監督を主な任務としていました。

設置の背景

文久の改革の一環として、幕府の教育機関の振興を目的として、文久2年11月14日（1863年1月3日）に学問所奉行が設置されました。これは、当時の幕府が教育の重要性を認識し、人材育成を強化しようとした現れと言えます。

初代奉行

初代の奉行には、田中藩主の本多正納と高鍋藩世子の秋月種樹が任命されました。特に秋月種樹は、外様大名出身であり、さらに藩主の世子という身分でありながら、この役職に抜擢されたことは異例でした。これは、当時の幕府が人材登用において、身分や出自にとらわれない姿勢を示したとも解釈できます。なお、秋月種樹は実際には藩主の実弟であり、廃藩置県によって家督を継ぐことはありませんでした。

その後の奉行

その後、文久3年（1863年）11月には沼田藩の土岐頼之が、元治元年7月10日（1864年8月11日）には結城藩主の水野勝知、同年7月28日（同8月29日）には黒川藩主の柳沢光昭が奉行に任ぜられました。このように、短期間のうちに複数の奉行が任命されたことからも、幕府がこの役職に期待をかけていたことが伺えます。

廃止

しかし、学問所奉行は、元治元年11月12日（1864年12月10日）には、内外の「政情多端」を理由として廃止されました。これは、当時の幕府が政治的な混乱の中で、教育機関の運営よりも他の問題に注力する必要があったことを示唆しています。短期間で廃止されたことからも、幕末の激動の時代における幕府の不安定な状況がうかがえます。

まとめ

学問所奉行は、幕末の激動期に、幕府が教育機関の改革と人材育成を目指して設置した役職でした。しかし、内外の政情不安により短期間で廃止され、その役割は十分に果たされたとは言えません。この役職の設置と廃止は、幕末の幕府が直面した様々な課題と、それに対する試行錯誤を象徴する出来事であったと言えるでしょう。

参考文献
* 須藤敏夫『近世日本釈奠の研究』（思文閣出版、2001年） ISBN 978-4-7842-1070-1

もう一度検索