学生やくざ

『学生やくざ』(1974)：正義感溢れる学生と暴力団の抗争

1974年2月16日、東映より公開された『学生やくざ』は、84分のカラー映画である。空手と度胸、そして揺るぎない正義感を武器に、悪の組織に立ち向かう一匹狼の大学生、島崎角太郎の活躍を描くアクション映画だ。

渡瀬恒彦演じる角太郎は、単なるアクションヒーローではない。彼の行動原理は正義感に裏打ちされており、暴力に訴えるのではなく、時には知略を用い、時には仲間と共に立ち向かう姿は、多くの観客の共感を呼んだだろう。暴力団との抗争は、単なる乱闘ではなく、それぞれの思惑が複雑に絡み合い、スリリングな展開を見せる。

映画は、角太郎を取り巻く様々な人間模様も丁寧に描いている。友情、愛情、そして裏切りといった感情が、物語に深みを与えている。ヒロイン役には青木リカ、堀越光恵といった当時の若手女優陣が名を連ね、それぞれのキャラクターが物語に彩りを添えている。

南利明、岡八郎、北村英三など、個性豊かなベテラン俳優陣が脇を固め、暴力団の冷酷さと残虐性をリアルに表現している。彼らの存在感は大きく、角太郎の正義感と対照的な存在として、物語の緊張感を高めている。また、映画には、当時の若者文化であるスケバンなども登場し、時代背景を色濃く反映している。

アクションシーンは、迫力満点だ。空手の技が惜しみなく披露され、観客を興奮の渦に巻き込む。監督の清水彰の手腕が光る、見応えのあるアクションシーンは、本作の大きな魅力の一つだろう。

さらに、本作には、現代社会にも通じるテーマが潜んでいる。正義と悪、力と弱さ、そして友情と裏切り。これらの対比を通じて、観客は自身の正義観を問われることになるだろう。

『学生やくざ』は、単なるアクション映画としてだけでなく、人間の業や社会問題にも深く切り込んだ作品であると言える。派手なアクションシーンと、心に響く人間ドラマ、そして時代を反映した背景描写が見事に調和した、昭和時代の青春アクション映画の傑作だ。

スタッフ

監督：清水彰
企画：今川行雄
原案：冨綱宏一
脚本：皆川隆之、冨綱宏一
撮影：わし尾元也
照明：北口光三郎
録音：中山茂二
美術：井川徳道
音楽：鏑木創
編集：堀池幸三
指導・日本正武館：鈴木正文
助監督：藤原敏之
記録：辻敬子

キャスト（一部抜粋）

島崎角太郎：渡瀬恒彦
銀子：青木リカ
堀田艶子：堀越光恵
本間源吉：菅原文太
その他多数

1993年には東映ビデオよりVHSビデオソフトが発売されたが、現在は廃盤となっており、DVD化もされていないため、現在入手困難な作品となっている。貴重な昭和レトロなアクション映画として、機会があればぜひ鑑賞していただきたい。

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