学群

学群とは、大学における学士課程教育の基本となる組織形態の一つで、従来の「学部」に代わるものとして導入されることがあります。

組織構成

典型的な学群制度を採用する大学では、学生は学士課程における教育の最小単位である「学類」に所属します。学群は、この複数の学類を束ねる上位の組織として位置づけられます。一方で、教員は教育組織である学群・学類とは別に、研究活動を行うための基盤組織である「学系」に所属することがあります。このように、教育と研究の組織を機能的に分離する構造を持つのが特徴です。

歴史と導入

学群・学類・学系といった組織制度を日本で初めて導入したのは、1973年に開学した筑波大学です。筑波大学は、それまでの東京教育大学が筑波研究学園都市へ移転するにあたり、従来の大学モデルとは全く異なる教育研究体制を持つ「新構想大学」として設立されました。

従来の大学が学部・学科・講座によって教育と研究を一体的に運営していたのに対し、筑波大学は教育を担う学群・学類と研究を担う学系を分けることで、組織の機能分化を図ることを目指しました。これにより、教育プログラムの編成や学生の所属、教員の研究活動それぞれに柔軟性を持たせることを意図していました。

筑波大学の変遷

筑波大学が設立当初に設置した学群は、第一・第二・第三といったナンバーを冠した学群と、医学専門、体育専門、芸術専門といった専門学群の計6つでした。ナンバー制の学群は、それぞれ人文・社会・自然といった広範な学問分野を横断しつつ、基礎科学、応用科学、工学などの教育目標に基づいて統合されたものでしたが、その内容が一般には理解しにくいという課題がありました。このため、2007年には関連する学問分野ごとに再編され、現在の学群構成となりました。

他大学への展開

筑波大学以降、国立大学法人化が進んだ2000年代に入り、福島大学（2004年）や桜美林大学（2005年）などが学部を改組して学群を設置しました。これを皮切りに、いくつかの大学が学群制を導入しています。

これらの大学では、特定の専門分野に特化した「学部」とは異なり、より広範な学問分野に基づいた学士課程を展開するための構成単位として学群を用いることが多い傾向があります。多様な学びを提供し、学生の興味や進路に合わせて柔軟に専門を選択できるような教育プログラムを構築する際に、学群という単位が活用されています。

多様なあり方

ただし、後から学群制度を導入した全ての大学が、筑波大学のように教育と研究の組織を分離しているわけではありません。教員も学群に所属し、教育と研究が一体となった組織運営を行っている大学もあります。このように、学群のあり方は大学によって多様化しています。

また、日本工業大学のように、学部の中のいくつかの学科をまとめて束ねる、いわば学部内の下部構成単位として学群を設置した例も見られます。

制度からの転換

学群制度を導入したものの、後に再び学部制度へと組織を戻した大学も存在します。和洋女子大学や日本工業大学などがその例です。

類似する組織単位

学群と同様に、従来の学部や学科に代わる大学の組織単位として、「学域」や「学環」といった名称が使用されることがあります。これらの用語もまた、従来の学部制度にとらわれない教育組織を示すために用いられます。

「学院」という名称も組織単位として存在しますが、これは東京工業大学のみで採用されている方式であり、一般に学校全体を指す「学院」とは異なります。また、学部と大学院の研究科を統合した教育研究組織であるため、学群や学域、学環とはその性質が異なります。

学群制を採用する大学例

いくつかの大学が学群制を採用しています。

国立大学
筑波大学（人文・文化学群、社会・国際学群など）
福島大学（人文社会学群、理工学群など）
公立大学
宮城大学（事業構想学群、看護学群など）
高知工科大学（システム工学群、環境理工学群など）
私立大学
桜美林大学（リベラルアーツ学群、ビジネスマネジメント学群など）
札幌大学（地域共創学群）
酪農学園大学（農食環境学群、獣医学群）
省庁大学校
防衛大学校（応用科学群、電気情報学群など）

これらの大学は、それぞれの教育理念に基づき、学群という組織形態を活用しています。

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